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宇佐美、武藤に抗う同世代・遠藤航。
「高3の時よりは抑えられたかな」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/21 10:30
他クラブからの大型オファーの噂もあったが、湘南でのプレーを選んだ遠藤航。18歳からスタメンを張り続けてきた男は、同世代でも頭一つ抜けた実戦経験を持っている。
“先輩”遠藤保仁の遠藤航評は?
一方で、対個人はどうだったのだろう。1次予選では当たり負けせず、カウンターを受けても遠藤は相手FWを1対1で潰していた。今回の武藤、宇佐美はともに真正面から対峙するシーンはそれほど多くなかったが、何かしらの手応えは感じたのだろうか。
「2人と対戦して、流れの中でやられた感はなかったです。貴史のゴールもセットプレーからだったので。貴史とは高3以来の対戦になりましたけど、ボールを持ったら奪われないというのは感じたし、人をかわす能力があるなって思いました。でも、高3の時よりは抑えることができたかなと思います(笑)。
ただ、実際に2人に点を取られているし、それが相手チームの勝利に繋がっている。チームの勝利に貢献するプレーという意味で、僕ももっと貢献していきたい。それに2人はA代表に入っているので、自分もそこは意識して狙っていきたいと思っています」
同年代の2人を意識していたものの結果的にゴールを決められ、2連敗を喫した。悔しさを噛み締める表情には、「絶対に負けたくない」という強い気持ちが表れていた。優しい風貌の下には、激しい闘志がフツフツと燃えている。そうしたギャップがあるのも遠藤の魅力である。実際、この日対戦した遠藤保仁は、遠藤航についてこう言った。
「直接対峙していないし、よく知っているわけじゃないけど、いろんなポジションができるし、ガツガツくるよね。それは海外を含めどんな試合でも大事なこと。将来、有望な選手だけど、後(守備)の選手は経験が大事だから、あまり焦らず、ゆっくり成長していけばいいと思う」
次回、武藤や宇佐美と対峙するときまでには。
ゆっくり成長していけば必ず道が開ける。遠藤保仁はちょうど今の遠藤航と同じ年代の頃、シドニー五輪でバックアップメンバーとして現地に同行する屈辱を味わい、ドイツW杯も出場できなかった。その後の活躍は周知の事実だが、若い時に苦労した遠藤保仁の優しい気遣いが垣間見えた。大先輩の言葉を、どう受け止めたのだろう。
「嬉しいです。でも試合で結果を出せていないし、自分の良さを出せていない悔しさがある。パスの精度や試合をコントロールする力とか課題もたくさんあるので、自分はまだまだこれからもっと頑張らないといけないと思っています」
遠藤は殊勝な表情で、そう言った。
これからもうまく行かなかったり、やられて痛い思いをするだろう。そうした経験は選手としての伸び代を考えた時、必要なことだ。遠藤には、それを真摯に受け止める度量とメンタルの強さ、うまくなりたいという向上心がある。次回、武藤と宇佐美に対峙した時、彼らを封じ込んでチームを勝利に導き、またひとつ成長した姿を見せてくれるはずだ。