松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
笑顔のような、仏頂面のような表情。
松山英樹、マスターズ5位を振り返る。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2015/04/13 13:15
最終18番ホールをバーディーで締め、ガッツポーズを見せた松山英樹。優勝の可能性がほぼ消えても集中力が途切れないのが彼の強みの1つなのだ。
笑顔のような、仏頂面のような。
戦い終えた松山は複雑な表情をしていた。
笑顔のようで、仏頂面のようで、それが何を意味しているかは明白だった。
本当は手に汗握る優勝争いがしたかった。本当はマスターズ優勝を成し遂げたかった。だが、最終日を迎えた時点で、首位に「追い付き追い越せ」ではなく、首位との差を「少しでも縮められたらいいな」と思うしかなかったサンデーアフタヌーン。それは彼にとって、悔しさが残る最終ラウンドだった。
「優勝するためには、ストローク差がありすぎた。だから、いいプレーをしてもなかなか追い付けなかった」
そう、6アンダー、66をマークした松山の最終ラウンドは間違いなく「いいプレー」だったのだ。しかしそれほどいいプレーをしても、スピースとの差は最終的には7打差。それ以上縮まることはついになく、彼の今年のマスターズは終わってしまった。
けれど、それでも堂々5位に入った。「頑張りますとしか言えない」「60台を出したい」と言った前日の言葉をきちんと実現する形で最終日を戦い抜いた。それはそれで「すごくうれしい」。だが、後悔は「やっぱり残りますよね、勝てないと」。
うれしさと悔しさ、どちらもある。だから彼は複雑な表情をしていた。
「やっぱり勝ちたい。1年後ここに戻ってくる」
しかし、72ホールを終えて残ってしまった後悔さえも、早々に今後のための糧に変えようと前を向く。そんな切り替えの早さは彼の武器。それが、これまでの松山を速いスピードで前進させてきた。
「(パットの)ストロークは昨日までより感触が良かったけど、なぜ良くなったのかは自分でわからないままなので、そこはずっと悩んでいるけど、そこがわかってくれば、もっとプレーは楽になるし、初日から上位で戦えるのかな。こういう大舞台でもっともっと上に行くためには、今のパッティングでは厳しい。それがわかっただけでも、すごく大きい」
勝つための課題は見えた。頂点に続く道は、さらに開けた。
「やっぱり勝ちたい。1年後ここに戻ってくるときに、今年以上のものを出せるように、しっかり作っていきたい」
最終日の夕暮れに噛み締めた後悔を、1年後のこの夕暮れに歓喜の涙に変えるべく、松山はこれからさらに歩を進めていく。くよくよしている時間はない。この4日間は「早かったです」。そして、来年のマスターズも、あっという間にやってくる。松山がグリーンジャケットに袖を通す日は、決して遠くない。