小さな挙動も好順位も、全てがいつも通り。

　リーダーボードに「MATSUYAMA」の名前が載ってくる。それさえも、もはや「いつも通り」と感じているかのように、松山は顔色ひとつ変えず、淡々とプレーを続けた。

　開幕前、「知らないほうがいいところもある。（たとえば）12番は知れば知るほど考えて、より難しくなる」と言っていた“難所”アーメンコーナーでさえ、彼は「いつも通り」の慎重なプレーで攻略していった。

　左サイドに池が広がる11番は、グリーン右手前からピンから1m半にうまく寄せてパーセーブ。12番はピン左8mから、きっちり2パットでパーを拾った。

　そして、パー5の13番。フェアウェイ右サイドの絶好のポジションから2オンを狙った第2打が、グリーンをオーバーして左奥のバンカーに転がり込んだ。

　そこからの3打目のバンカーショットが圧巻だった。宙を舞い、グリーン面に落下したボールは、隠されたレールの上を転がるかのように右から左へカーブを描きながらカップに寄っていき、イージーバーディー。

　同組のウエブ・シンプソンから声を掛けられた松山の頬が緩み、白い歯が光る。そんな光景も、リーダーボードをさらに浮上して5位まで上った瞬間も、すべては今季の松山の「いつも通り」の姿だった。

オーガスタは、最後に厳しい表情を見せた。

　けれど、そのまま終わらせてはもらえなかった。17番ではティショットを右に曲げ、松の枯れ葉の上にボールが止まった。第2打をピンそばに付けられず、3パットでボギーを喫すると、18番はティショットが左のフェアウェイバンカーにつかまり、3mのパーパットを沈められず、2連続ボギー。

　悔しい締め括りになってしまったのは、フェアウェイを外したせいか、それとも？

【次ページ】　初日に残した1つの後悔と、残り54ホール。