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アスリートは花粉症をどうしてる?
五輪選手にも急増中で、薬と対策は。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/04/10 10:30
走り勝つことをモットーにした湘南で10番を背負う菊池大介。花粉症でも、ピッチの上では平気なのだろうか。
花粉症の薬は、ドーピングに引っかかるものが多い。
蒲原:花粉症関係の薬に関しては、けっこうドーピングに引っ掛かる物質が多いんです。特に市販のものは、ほとんどのものが引っ掛かりますね。ただ、病院で処方するものに関しては少なくなっています。ですので、アスリートが花粉症の薬を服用する場合は「必ず医療機関を受診してください」と伝えています。
――蒲原医師がおっしゃった“引っ掛かる物質”を具体的に教えてもらえますか?
蒲原:市販薬だとエフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリンという成分が入っています。漢方薬では麻黄(まおう)という成分がエフェドリンと同じものとなるんです。それを含むとダメです。ちなみに麻黄は風邪薬として馴染み深い「葛根湯」、花粉症でよく使われる「小青竜湯」にも入っています。
――葛根湯もダメなんですか。僕、風邪引くとよく飲んでますけど。
蒲原:アスリートではないので、大丈夫ですよ(笑)。医療機関で使われている物質に関しては、症状が重い時に使われる「セレスタミン」という薬があるんですが、これには糖質コルチコイドという成分が入っています。
――糖質コルチコイドって、確か……医療の世界ではステロイドに当たるんでしたっけ?
蒲原:そうですね。正確に言えば、ドーピングの世界で言うアナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)とは違うものなんですけどね。ただ、糖質コルチコイド自体は禁止物質となっています。
試合の一週間前にやめれば大丈夫と言われているが……。
――強めの薬を飲む際、気をつけておくタイミングはあるんでしょうか。
蒲原:先ほど挙げた糖質コルチコイドは“普段は使ってもいいけど試合前は使ってはいけない”ものです。このタイミングは少し難しく、「何日前に服用をやめたら大丈夫」というのは個人差があるんです。
――やはりそこは、人それぞれなんですね。
蒲原:一般的には1週間前にやめておけば大丈夫と言われていますが。ただそれが確実というわけではないので、試合1カ月前くらいの選手には処方する、という形でしょうか。1週間前にどうしても飲まなければいけない……という状況だと、TUE(治療使用特例)申請という許可を得る手続きは考えられます。ただこれまでは花粉症でTUE申請をしたことはないですね。
――なるほど(笑)。