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セルヒオ・ガルシアを代表CFに!
エスパニョールで見せる熟達と男気。

posted2015/02/25 10:45

 
セルヒオ・ガルシアを代表CFに!エスパニョールで見せる熟達と男気。<Number Web> photograph by MarcaMedia/AFLO

リーガの5クラブを渡り歩いてきたセルヒオ・ガルシア。エスパニョールではキャプテン・マークをまく。

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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 ダビド・ビジャが長期の負傷離脱を強いられて以降、空席状態が続いているスペイン代表のセンターフォワードに是非とも推したい選手がいる。バレンシア、セビージャら強豪を撃破し、アスレティック・ビルバオとの準決勝でもアウェーのファーストレグを1-1で引き分け、9年ぶりのコパデルレイ決勝進出に王手をかけたエスパニョールのエース、セルヒオ・ガルシアだ。

 彼の名を聞いてリーガ・エスパニョーラのファンがすぐに思い浮かべるのは、黒髪のポニーテールをなびかせてディフェンスラインを切り裂いていたサラゴサ時代のプレーだろうか。

 バルサのオールドファンであれば、純正のストライカーがなかなか育たないラ・マシアの出身で珍しくトップチームデビューに至った点取り屋として、銀色に染めた髪をツンツンにおっ立てていた姿が思い浮かぶかもしれない。

 だがそのような人々も、頭頂部以外を奇麗に刈り上げた短髪がすっかり定着した今の彼を見れば、過去のイメージを塗り替えられてしまうのではないか。31歳のベテランとなった彼のプレーには、それぐらい強烈なインパクトがあるのだ。

調子がいい時ほどチームが苦しみ、3度の2部降格を経験。

 不思議なことに、これまで彼のキャリアは個人的に高いパフォーマンスを発揮するシーズンほどチームが不振に苦しむ逆転現象が続いてきた。

 レンタル先のレバンテで31試合出場7ゴールを記録し、プリメーラで通用する選手であることを証明した'04-'05シーズン。コンバートされた右サイドでチャンスメーカーとして開花し、それがEURO2008へのサプライズ招集につながったサラゴサでの'07-'08シーズン。多数のオファーを受ける中で選んだベティスで当時の自己最多となるシーズン10ゴールを挙げた'08-'09シーズン。

「あまり気にしていないよ。一人の選手がチームを降格させるわけじゃないからね」

 本人はそう言っているものの、いずれもチームMVPと言える活躍を見せた3つのシーズンで3度の2部降格を経験した選手など、世界中を探してもなかなかいない。

 そんな彼が地元バルセロナへ、しかし古巣バルサのライバルクラブへ移籍したのは2010年夏のこと。その後の2シーズンは経営難に苦しむチームが最低限の目標である1部残留を成し遂げる傍ら、彼自身は低調なパフォーマンスに終始していた。

 さらに3年目の'12-'13シーズンはチームも絶不調に陥り、最下位に沈んだ13節終了時点で4年弱の長期政権を築いていたマウリシオ・ポチェッティーノ監督の解任が決定する。だがチームが危機に瀕した時ほど輝きを放つのがセルヒオという男だった。

【次ページ】 ハビエル・アギーレの下、キレと閃きを取り戻す。

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