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セルヒオ・ガルシアを代表CFに!
エスパニョールで見せる熟達と男気。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2015/02/25 10:45
リーガの5クラブを渡り歩いてきたセルヒオ・ガルシア。エスパニョールではキャプテン・マークをまく。
ハビエル・アギーレの下、キレと閃きを取り戻す。
後を継いだハビエル・アギーレの下、数年ぶりに「自分にとってのナチュラルなポジション」である本職のセンターフォワードに据えられた彼は、その後水を得た魚のようにキレと閃きに溢れたプレーを取り戻し、チームを中位に押し上げる原動力となったのである。
昨季は退団したクリスティアン・アルバレスに代わって新キャプテンにも就任。自ら突破し、ゴールを決めるだけでなく、前線でボールをキープしてカウンターの起点となり、意表をつくパスでチャンスを作り出すストライカー兼チャンスメーカーとしてシーズンを通して圧倒的な存在感を放ち続けた。30歳で迎えたこの年、彼は過去最高の13ゴール9アシストを記録してシーズンを終えた。
衰える気配のないスピードと体のキレと、トップスピードで走りながらもブレることのない高度なボールコントロール技術。若い頃から備えていた能力に加え、今の彼は相手の心を見透かしているかのようにことごとくマーカーの逆を突く駆け引きの巧さ、そして相手のGKやDFが犯す僅かなミスを生かしてゴールに結びつける狡猾さなど、熟達したプレーで毎試合スタンドを驚かせている。
中国クラブからの年俸1000万ユーロの契約を断る。
監督がセルヒオ・ゴンサレスに代わり、2トップの一角としてプレーするようになった今季も圧倒的な存在感は変わらない。締め切り時点でリーガとコパを合わせ、10ゴール9アシストを記録。リーガでは24節終了時点でサッラ賞(スペイン人得点王)争いのトップタイに立つ9ゴールを挙げ、早くも昨季の自己ベストに手をかけようとしている。
幼い頃から成功を夢見たクラブではなかったものの、家族に囲まれた地元バルセロナでプレーを堪能できる環境を手に入れた。ゆえに昨夏エスパニョールとの契約を2018年まで延長すると共に、現役引退までブランキアスル(青白)のシャツを着続ける意思を表明したのも自然な成り行きだった。
「他にもオファーはあったが、自分の家はここにある。これからの4年もチームの中心となりたい。引退するまでね」
その言葉が偽りでないことは、つい先日にも証明された。中国リーグのクラブから届いた年俸1000万ユーロの2年契約という破格のオファーを、きっぱり断ったのである。
「キャプテンが航海途中で船から降りることはできない。自分の仲間、自分の家はここにある。行くことはできない、とハートが訴えてきた。だから断ったんだ」