錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
『TIME』誌の表紙で世界的スターへ。
全豪で錦織を待ち受ける強敵と栄光。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph bySports Graphic Number
posted2015/01/15 10:45
“THE WAY OF KEI”という表題と共に「日本テニス界のスター選手・錦織圭が世界をとる」と綴ってある『TIME』誌の表紙。
錦織の強さは「日本人らしくないメンタリティ」!?
アメリカでの生活が長く、「日本人らしくないメンタリティ」は錦織の強みの一つと見られているが、にもかかわらず、そうしたイベントでの錦織は実に日本的なものを背負い、それに嬉々として応えるだけの日本人らしさを内に秘めている。それを無双のオリジナリティとして分析しているのが興味深い。
なるほど、ラケットを持っても日本人らしくお行儀のいいポーズをとっている雑誌表紙の錦織の姿は別段珍しくもないが、だんだんミステリアスに見えてきた……。
“新時代のライバル”ラオニッチに負けるという意味。
しかし、この『TIME』誌の表紙が世に公開された翌日、錦織はラオニッチに敗れた。
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錦織が「トップ10の中でもまた格が違う」と特別視する〈ビッグ3〉――ノバク・ジョコビッチ、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル以外にも、こうして強敵はそこかしこにいる。
特にひとつ年下のこのラオニッチとの関係は「新時代のライバル同士」と目されており、昨年だけで4度も対戦。その数は錦織にとってはダビド・フェレールと並んで最も多い。錦織は昨年、日本プロスポーツ大賞など数々の賞をもらったが、ラオニッチだってカナダのプレスが選ぶ「アスリート・オブ・ザ・イヤー」を2年連続で授かっているナショナルヒーローなのだ。日本のファンの目には錦織中心にまわっているかのように見えたシーズンの開幕も、当然カナダのファンの目には違って映っただろう。
7-6(4) 6-7(4) 6-7(4)というスコアはそれだけで、2人の関係のエキサイティングな進展を予感させるに十分だ。
ラオニッチはグランドスラムではウィンブルドンのベスト4が最高成績だが、全豪オープンに向けて「自信は感じる。〈何か大きなこと〉をやれる力は自分の中にあると信じている」と語った。一方、〈優勝〉という明確なゴールまでの距離について聞かれた錦織は、こう答えている。
「さぁ……優勝には時間が少しかかるかもしれない。運も必要だし。でもいつかグランドスラムで優勝できる日がくればと思う。それが僕の夢。2、3年の間にやり遂げたい」
「2、3年の間に」とは控えめすぎるようにも聞こえるが、それが実感なのだろう。成長しているのは自分だけではないし、新勢力の旗頭たちだけでもない。