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『マリア・シャラポワ自伝』「テニスは好きでも嫌いでもない」“成功の金”を求めた女王の軌跡。
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph bySports Graphic Number
posted2018/08/27 07:00
『マリア・シャラポワ自伝』マリア・シャラポワ著 金井真弓訳 文藝春秋 2100円+税
テニス選手の自伝というジャンルにおいては、アンドレ・アガシの『オープン』が最高峰だと思っている。スポーツ選手の人生には、無一文からお金持ちというストーリーは多いが、アガシの本には質の高いドラマ性があり、文章も美しい。
マリア・シャラポワの自伝は、アガシほど完璧ではないものの、アメリカン・ドリームを追ってきた移民の彼女の物語には、正真正銘のロマンがある。
「テニスは好きでも、嫌いでもない。試合に負けるのが嫌い、お金を稼ぐのが好き」
これは全体の流れを決定づける名言だ。そこに偽善性はない。
「5つのグランドスラムを優勝したけれど、いつまでも優勝に飢えている」