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高校選手権のスターたちの進路は?
J入りは7人、増える進学という選択。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2015/01/14 11:40
流通経済大柏からFC東京への入団が内定している小川諒也。周りの選手よりも一回り大きな体格と運動量を併せ持つ逸材だ。
選手権は1得点に終わるも、存在感を放った渡邊。
「正直、(準決勝までは得点を奪えず)チームには迷惑をかけているので……こんなに得点が奪えないのは久しぶりというか、初めてだったんじゃないかと思います」
準決勝後にこう語っていた渡邊は、今大会は決勝戦での1得点のみに終わったものの、左右ともに強烈なキック力を存分に発揮。ペナルティエリア外からも積極的にゴールを狙うシュートレンジの広さは高校生年代で随一と言えるだろう。またその両足から繰り出されるロングパスも持ち味で、今大会ではアシストを量産した。
168cmの鈴木は、攻守に“気が利く”のが長所。
一方で、168cmと小柄ながらも存在感を見せた鈴木は、試合展開を考慮に入れながら試合を運べるクレバーさが最大の特徴だ。
準決勝、決勝の2試合でも、冷静な状況判断でチームを救うプレーを見せた。
まず準決勝では流通経済大柏に1点をリードされた時点で積極的に前に出ていくことを決意。後半終了直前に相手クリアのこぼれ球を正確にトラップし、右足を一閃してゴールを決めたのは印象的な場面だろう。
攻撃だけでなく、守備でも“気が利く”のが鈴木のストロングポイントだ。
今大会の前橋育英はオーソドックスな4-4-2、もしくは4-2-3-1気味の布陣を採用していたが、2回戦の初芝橋本(和歌山)戦での鈴木はリードを奪って以降、ボランチというよりもアンカーのようなポジショニングを取って、スペースケアに努めていた。
決勝戦でも危険な局面を防ぎつつ、フィニッシュを呼び込んだシーンがあった。
54分のことだ。星稜の大田賢生がハーフライン右でタメを作り、最終ラインに落としたボールがダイレクトで前橋育英の最終ライン裏に出る。そのスペースに杉原啓太が走り込んだが、危険を察知した鈴木は杉原に並走し、ペナルティエリア内で上手く体を入れてボールを奪い取った。そして素早く正確にボールを繋ぎ、渡邊のゴールを生むきっかけとなったのだ。
また、直前の50分にも右サイドを起点にした星稜のカウンターチャンスを、鈴木はパスコースをいち早く封じてボールをカット。直後に得たFKのこぼれ球に走り込んでミドルシュートを放った。シュートこそ大きく枠を外れたが、2つのシーンは鈴木のプレースタイルを象徴するようなプレーだった。