遠藤の交代後、落ち着きが消えた日本。

　4－0になったこともあって、遠藤は後半13分に武藤嘉紀と交代した。

　連戦が続くこともあっての“温存”だろうが、遠藤不在でどこまでやれるのかアギーレ自身、見たかったという思いもあったのだろう。だが、相手が1人退場して10人になったにもかかわらず、彼がピッチを離れてからは5点目を奪えなかった。攻め急いでしまい、チームの落ち着きが消えてしまったのが少々気になった。

　ベンチに下がって試合を見守った遠藤は「点差の問題もあると思う。チームとしても自分としても、勝ってスタートを切れたことが一番」と言い切る。過去3度アジアカップに出場して初戦の難しさを誰よりも知っているだけに、彼はまずもって勝利の意義を強調した。

「みんなが連動していい攻撃ができた時間帯もありましたし、ミスのある時間帯もあった。（いい攻撃を）増やしながら、（ミスを）減らしながらやっていければいい。前にいるオカ（岡崎）が真ん中にいて、あとはポジションチェンジしながら自由にやりたいと思うし、プレスの激しいチームに対してもそれをやっていかないといけない。いい入り方はできたと思う。まだ手探りのところはあるけど、うまくいってるんじゃないですかね」

　淡々と、そして落ち着いた口調で彼は言った。

最年長の遠藤が、チームのプレッシャーを取り除いた。

　ブラジルW杯で惨敗に終わった悔しさに加え、2連覇が懸かる大会となればチームはどうしても肩の力が入りかねない。アギーレ監督も八百長疑惑を抱えたままだ。チーム全体がプレッシャーで硬直しかねない部分を、キャリアのある最年長の遠藤がそっと取り除いてくれたようにも思えた。

　いつしか横なぐりの雨は止み、猛烈に吹き荒れた風も収まった。

　悪天候をものともせず、プレッシャーに打ち勝った意義は決して小さくはない。