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“小ナベツネ”がチームを強くする。
清武騒動に思う「優秀な編成マン」。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKyodo News

posted2014/12/26 10:30

“小ナベツネ”がチームを強くする。清武騒動に思う「優秀な編成マン」。<Number Web> photograph by Kyodo News

事の発端は2011年オフ、清武英利球団代表(当時)が、巨人のコーチ人事を巡り不当な介入を受けたとして渡邉恒雄顧問を告発したこと。その後、訴訟合戦に発展。東京地裁は清武氏側に160万円の支払いを命じた(清武氏側は控訴している)。

清武裁判を取材して改めて思う、編成マンとしての優秀さ。

 そういう絶対権力者の存在が、逆に戦力補強で「いる」「いらない」を決めるときに素早く柔軟な対応にもつながっている。それが編成では大事なことなのかもしれない。

 そんなことを思ったのは、12月18日に巨人球団等と清武英利前巨人代表が、お互いを名誉毀損などで訴えている、いわゆる“清武裁判”の判決と、その後の会見を取材したときだった。

 もともとは巨人の球団人事を巡るイザコザに端を発した騒動だったが、最後は法廷内外でお互いによる暴露合戦が繰り広げられてきた。東京地裁の判決は球団側の全面勝訴。清武元代表には合わせて160万円の支払いが命じられ、訴えはすべて棄却された。ただ、巨人も勝利という二文字は手に入れたものの、合わせて1億円と値踏みした自らの「名誉」の価値には、たったの160万円しか値段がつかなかった。

 結果的には巨人の伝統とプロ野球のイメージを失墜させた、まさに不毛な争いというだけである。

 そして判決を機に改めて清武時代と今の巨人の編成を比べると、清武氏の編成マンとしての優秀さを思うのである。

巨人時代の清武氏は、絶対的権力者だった。

 巨人時代の清武氏は、いい意味でも悪い意味でも、広島の松田オーナーのような絶対的権力者であった。

 その権力によって、巨人のチーム編成は強引に、だがうまく進んでいた時期が確かにあった。そしてその一元的な支配を失った今、チーム編成は下降線をたどっている。“清武遺産”を食い潰すような場当たり的な編成の結果が、今の巨人のチーム力の下降に繋がっているといえるのも確かなのである。

「日本の至るところで、いわば小ナベツネのコンプライアンス違反に苦しんでいる人がいる」

 裁判後に清武氏側の弁護団が出した声明文の一節である。

 実は清武氏自身が、巨人時代に「小ナベツネ」と陰口を言われていたから、このフレーズは喜劇的でもある。ただ、そうして「小ナベツネ」と陰口を囁かれても、育成制度の活用など清武氏の編成手法によって、ここ数年の巨人のチームの土台は築かれた。

 コンプライアンス違反云々は別にして、清武時代の巨人の編成を思い返すと、プロ野球のチームを強くしていくためには、そういう一元的支配で編成を引っ張る強権も必要だということを痛感するのである。

【次ページ】 ビリー・ビーンも、強権を振りかざす編成トップだった。

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