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20歳の北島康介と20歳の萩野公介。
五輪、メダル、そして世界記録――。
posted2014/12/17 10:40
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
AFLO
日本が世界に誇る偉大なスイマー、北島康介。
17歳の2000年にシドニー五輪代表となり、100m平泳ぎで4位入賞。その後、2001年福岡世界水泳選手権の200m平泳ぎで銅メダルを獲得したことを皮切りに、世界の第一人者としての階段を駆け上っていく。そして今、新たなスイマーがその後に続こうとしている。
萩野公介、20歳。
北島と同じように、17歳でロンドン五輪代表入りを果たし、400m個人メドレーでマイケル・フェルプス(アメリカ)を破って銅メダルを獲得した。翌年のバルセロナ世界水泳選手権で複数のメダルを獲得。
20歳になった今年、世界記録はならなかったものの、パンパシフィック水泳選手権で個人メドレーと自由形で4つのメダルを獲得し、アジア大会ではリレーを含む4つの種目で金メダルに輝き、出場した7種目すべてでメダルを獲得するという偉業を打ち立てた。北島と萩野、この2人に共通している点は多い。
専門に特化した北島、マルチスイマーを目指す萩野。
まず、共に17歳で初めての五輪を経験していることだ。五輪の舞台を足がかりにして、翌年から世界のトップスイマーとして成長した。結果は、銅メダルを獲得した萩野が北島を上回っている。
北島は20歳だった2002年、釜山で行われたアジア大会の200m平泳ぎで、マイク・バローマン(アメリカ)の記録を10年ぶりに破り、世界記録保持者となった。翌年には100mでも世界記録を更新し、名実共に世界のトップに立ったのだ。
一方今年20歳になった萩野は、まだ世界記録を更新していない。この点では、萩野は北島を超えているとは言えないだろう。
だが萩野が北島と決定的に違うのは、個人メドレーに限らず複数種目を泳ぐ、いわゆるマルチスイマーとして世界トップの仲間入りを果たしたことだ。
これは、今までの日本人選手にないことだった。種目を絞り、距離も絞る傾向にある日本人選手だが、萩野はそれに対抗するように個人メドレーだけではなく自由形でもメダルを獲得。背泳ぎも世界大会で入賞するほどの実力を持ち、12月に行なわれた世界短水路選手権では100mバタフライでも入賞を果たしている。
「フェルプス選手や、ライアン・ロクテ選手(アメリカ)のような、いろんな種目が泳げる選手が憧れでしたし、自分もそうなりたいと思っています」
2013年の日本選手権で、萩野が語った言葉だ。萩野は元々個人メドレー1本で世界と戦うという考えではなく、個人メドレーを軸にして、ほかの種目でもメダルを獲得できるような選手になりたいという思いを抱いていたのだ。