スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
王者アトレティコの選手が0人!?
リーガ個人賞の不透明な選考過程。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2014/11/05 10:50
10月27日の表彰式で満面の笑みを浮かべるセルヒオ・ラモス(中央)と、どこか浮かない顔のシメオネ(右から2番目)ら。
アトレティコ勢はシメオネ監督ただ一人だが……。
上記の受賞者一覧を見れば分かる通り、優勝したアトレティコ勢は最優秀監督に選ばれたシメオネただ一人で、選手の受賞者は皆無だった。一方で3位のレアル・マドリーからは最優秀選手、最優秀FW、ベストゴールのハットトリック受賞となったロナウドに加え、ラモスとモドリッチも選出されている。なお2位のバルセロナはイニエスタ1人、4位のアスレティック・ビルバオ勢はゼロだった。
各賞を個々に検証していくと、さらに不可解な点が見えてくる。
まずGK。確かに昨季のケイロル・ナバスはリーグ最多セーブ数を記録する素晴らしい活躍を見せた。だが、最も受賞に相応しかったのはナバスと遜色ないパフォーマンスをシーズン通して保った上、リーグ優勝&サモラ賞(最少失点GK賞)受賞という文句なしの結果を出したクルトワだったはずだ。
DFも同じく、次点に留まったミランダとフィリペ・ルイス、ノミネートすらされなかったディエゴ・ゴディンやフアンフランがラモスに劣っていたとは思えない。昨季ラモスはチャンピオンズリーグでは際立った活躍を見せたものの、リーガではアトレティコの守備陣ほどの安定感も結果も残せていない。
MFの不可解な分類。
MFについては、まずカテゴリーが「ディフェンシブMF」と「オフェンシブMF」ではなく、より広義の「MF」と狭義の「オフェンシブMF」に分かれているのがおかしい。
しかもどちらかと言えばオフェンシブの部類に入るモドリッチが「MF」、より攻守バランスのとれたコケが「オフェンシブMF」扱いとなるなど、分類の基準がはっきりしない。そしてその曖昧な分類の結果、前者は明らかなディフェンシブMFであるブスケッツとガビを抑えて最優秀MFに選ばれ、後者は過去数年で最も低調なパフォーマンスに終わったイニエスタに敗れている。
最優秀アメリカ大陸出身選手の選考方法も謎だ。同賞にノミネートされた3人はいずれも、それぞれのポジションの賞にはノミネートされなかった。一方、最優秀GKのナバス、最優秀DFにノミネートされたミランダやフィリペ・ルイスらは同賞の候補にも挙がっていない。