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山中慎介にもっとビッグマッチを!
7度目防衛の先に見えてきた統一戦。
posted2014/10/23 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
WBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)が22日、東京・代々木第二体育館のリングに立ち、指名挑戦者1位のスリヤン・ソールンビサイ(タイ)に3-0で判定勝ちした。
あの“カンムリワシ”具志堅用高の持つ世界タイトル6連続KO防衛の日本記録に並ぶことはできなかったが、KO負けが一度もないというタフなスリヤンから計3度のダウンを奪っての勝利で、7度目の防衛を成功させた。
山中は試合後「苦戦」と試合内容を表現した。確かに4回を終わっての採点は、ドローをつけたジャッジが2人で、残る1人は39-37でスリヤンのリードとつけたのだから「苦戦」も的外れではない。「序盤はうまいこと戦われた」というチャンピオンの感想は、そのままチャレンジャーの周到な準備を裏付けてもいた。
“神の左”への徹底的な対策を見せた挑戦者。
“神の左”なるニックネームに象徴されるように、サウスポー山中の武器は何と言っても一撃必殺の左ストレートだ。山中と試合をする相手は「左をもらわない」が勝利の絶対条件となる。スリヤンは過去の挑戦者がなしえなかった「左をもらわない」を実現すべく、母国でスーパーフェザー級のジョムトーン・チューワッタナ、ターサク・ゴーキャットジムという世界クラスの選手を相手にスパーリングを重ねた。
171cmと背が高く、懐も深い山中を攻略するには、160cmという自らの背の低さとスピードを生かす以外にはない。練習の成果が出たのだろう。序盤はその作戦がズバリ的中したのである。
山中より11cm背の低いスリヤンは、その体でさらに腰を落とし、アゴを強く引いて王者に迫った。山中にしてみると、スリヤンの顔ではなく、頭がこちらに向いていて、急所であるテンプルやアゴはほとんど見えない。パンチを正確にあてようとすると、どうしても狙いすぎの傾向が強まって手数が減る。逆にスリヤンはジャブのようなシャープな右を起点として距離をつぶす。山中は体を密着されて細かいパンチをもらうなど、見栄えの悪いシーンを何度も作ってしまった。