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対照的だった片山晋呉と池田勇太。
日本OPは「たかが」か「されど」か。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKyodo News

posted2014/10/21 16:30

対照的だった片山晋呉と池田勇太。日本OPは「たかが」か「されど」か。<Number Web> photograph by Kyodo News

選手会長との二足の草鞋で心配された池田勇太だが、日本オープン制覇で6年連続となるツアー勝利。この勝利で、初の賞金王も視野に入ってきた。

リーダーは精神的に追い込まれる、という経験則。

 争いが最終局面を迎えた時、リーダーは精神的に追い込まれていくと経験則で知っていた片山。一方で、タイトルの重みから解放されていた池田。実力者同士のコントラストがはっきりと出ていた戦いで、命運を分けたのは「気持ちのコントロール」だったと勝者は言った。

 3打のリードを持って迎えた16番パー3、池田は195ヤードのティショットを5番アイアンで放った。片山がドローボールで左奥のピンを攻めた一方で、ややフェード気味にピン手前の平坦なゾーンを狙った一打は「届かないと思ったけど、気合が入ると飛ぶんだね」と、奥のバンカーにつかまってしまう。寄せワンを狙えばバックスイングがバンカーの縁に当たる、左足下がりの最悪のライ。仕方なくピンを大きく右に外して脱出したが、結局4オン1パットのダブルボギーをたたき、1打差に迫られた。

 だが「まだ1打リードしている」と池田は揺るがなかった。

失敗したクラブで即座に攻め返した池田の勇気。

 ビッグプレーが生まれるのは、そんな逆境でもポジティブに考えられる豊かな精神状態のときだ。続く17番、右サイドのセミラフから、199ヤードを残した第2打。

「左の“ゲキピン”(厳しいピン位置)。風は左からのアゲ(向かい風)」

 手にしたのは、つい先ほどトラブルを招いた5番アイアン。

「前のホールで打ってオーバーした。だからっつって、緩めてもしゃあねえしなあ」

 風に乗らなければ、グリーンを外してまたしても難しいアプローチが残る。だが池田は、自分の技量と読みを信じ、風に寄り添うカットボールを打った。ピンからは7m。パーセーブするには十分だった。

 片山が3mのパーパットを沈めてガッツポーズを作った一方で、タイトルのかかる72ホール目に入った時点でも、池田は無邪気に笑っていた。

 最後に勝負を決めたのは、土壇場で恐怖心に打ち勝つ「アグレッシブな攻め」だった。

【次ページ】 泣き虫の池田が、涙を見せなかった。

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