濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日本大会メインを飾ったKO劇に思う、
なぜオクタゴンは魅力的なのか。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2014/09/27 10:40
“魅せる”打ち合いを繰り広げたマーク・ハント(右)とロイ・ネルソン。勝利したハントは「今日は2歳になる娘の誕生日なんだ、おめでとう」とインタビューに答えた。
鮮烈なインパクトを残した金原正徳と中井りん。
韓国のカン・ギョンホと対戦した田中はスプリット・デシジョンでプロ初黒星を喫した。DEEP出身の菊野克紀がフェザー級転向初戦で一本勝ちを収め、堀口恭司がUFC3連勝をTKOで飾った一方、前パンクラス王者の佐藤豪則は2連敗。
かつてPRIDEのリングを沸かせた五味隆典は、UFCデビュー以来5連勝中の新鋭マイルス・ジューリーのパンチを浴びて1ラウンド92秒でマットに沈んでいる。「10代の頃からゴミに憧れてたんだ。そんな選手に勝てるなんて」というジュリーの勝利者インタビューは、会場のファンにとって切なさを増幅させるものだったに違いない。
そんな中、鮮烈なインパクトを残したのが金原正徳と中井りんだった。
金原はテイクダウンとバックからのチョーク狙いで主導権を握り、UFC初戦でバンタム級10位のアレックス・キャセレスに3-0の判定で勝利する金星。日本人女子選手として初めてUFC出場を果たした中井は、ミーシャ・テイト(女子バンタム級2位)の打撃に苦しみ、判定負けを喫したものの最後までタックルで食い下がり、バックを奪う場面も。善戦とまでは言えないかもしれないが、トップの一角と渡り合う姿は多くの日本人女子MMAファイターに刺激を与えたはずだ。
メインは、趣が変わってヘビー級ランカー対決。
そしてメインイベントでは、大会の趣がガラッと変わった。ヘビー級ランカー対決。確固たるポジションを築いた者同士の闘いだから、そこに“通用するか/しないか”の切迫感はない。かわりにあったのはKOへの期待感だ。
マーク・ハントとロイ・ネルソン。どちらも“当たれば必殺”のハードヒッターで、お腹に脂肪が乗った体型とユーモアのあるキャラクターでも人気の選手。ハントは日本大会3年連続出場、ネルソンは4月のアブダビ大会で、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラを右フック一発でKOしている。
この2人が闘って、面白くならないわけがない。そんな予感が裏切られることはなかった。ネルソンがタックルを放つ場面もあったものの、最終的に狙うのはやはりパンチだ。1ラウンドから全力のパンチが飛び交い、気がつけば2人とも拳が胸のあたりに下がっていた。アゴをガードする気などサラサラなかったのだろう。この試合で大事なのはパンチを喰らわないことではなく、先に喰らわせること、それだけだったのではないか。