濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日本大会メインを飾ったKO劇に思う、
なぜオクタゴンは魅力的なのか。
posted2014/09/27 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
9月20日にさいたまスーパーアリーナで開催されたUFC日本大会の正式タイトルは「UFN(UFC Fight Night)52」という。
これはラスベガスなどで開催されるナンバーシリーズとは別形式で、世界各国で開催。トップファイターの顔合わせをメインとし、それ以外の試合には開催国および近隣国の選手が数多く出場するのが基本形だ。言ってみれば“世界版・地方巡業スタイル”ではあるが、それだけに地元ファンは熱が入る。
この日本大会には、12試合中10試合に日本人選手が登場。第1試合を務めたマキシモ・ブランコも日本をベースに練習している選手だから、メイン以外はすべて日本絡みと言っていい。
「どこまで世界と闘えるのか」を問いかけるオクタゴン。
それだけ、日本からUFCに参戦するファイターが増えたのだ。最近は若い選手も多くなった。日本のメジャーイベントから海外に活路を求めたベテランではなく、デビュー当時からUFCを目指してきた世代だ。たとえば23歳の田中路教は、早くからケージと海外での闘いに慣れるため、プロ6戦目からグアムで開催されているPXCに参戦。同団体のベルトを獲得してUFCに認められた。
UFCで闘う日本人ファイターの試合を見る時の心境は、サッカーのワールドカップ、その1次リーグで日本代表を応援するのに近い。
「俺たちの代表はどこまで世界と闘えるのか――」
勝ってほしいと思いつつ、決して楽観はできない。日本人にとってそうであるように、外国人にとってもUFCは世界最高峰の舞台であり、MMAファイターとして究極の目標だ。無名でも、高い実力を持つ選手が次々と現れる。無名に思えても、こちらが知らなかっただけということもある。日本大会は“日本対世界”の団体戦という見方もできるだけに、余計に期待も不安も高まるのだ。
実際、快勝の連続というわけにはいかなかった。それもワールドカップの日本代表と同じだ。美しいゴールもあれば、信じられないような失点もある。世界に通用するポテンシャルを示す選手がいる一方で、思わぬ挫折を経験する者も。