日本サッカーの未来のためにも拙速な方針転換は禁物。

　曰く、「パスをつなぐだけでは勝てない」、「ポゼッションで崩し切るのは日本人には無理」などなど。負けていながら、強引にミドルシュートを打つわけでも、早めにゴール前にクロスを入れるわけでもない淡々とした攻撃に、苛立ちを募らせていた人は存外多かった。今回、世界大会に出場できなかったことで、吉武流のサッカーに対する批判がさらに膨らむ可能性は十分にあるだろう。

　個人的には吉武流のスタイル、すなわちポゼッションサッカーに賛成だ。これからもこの年代で続けていってほしいと思うし、さらに上の世代にも波及すべきだとさえ思う。

　できるだけボールを長く保持し、自陣ゴールから遠い位置で試合を進めることは、前に触れた日本の課題を補ううえでも重要なことであり、失点の可能性を低くする有効な方策でもあるからだ。

　今大会でU-16代表が見せたポゼッションサッカーは、確かに不完全なものだった。マンツーマンをベースにハイプレスをかけてきたわけでもなく、ただただ引いて構えるだけの韓国から1点も奪えなかったのはいただけないが、だからこそ、むしろそこをもっと追求していってもらいたい。

　しかし、先のワールドカップでスペインが惨敗を喫した影響は大きく、あれほど世界中を魅了したポゼッションサッカーも、もはや過去のものと見なされつつある。そんななかでの今回の敗戦とあって、どうしても風向きは悪い。

　果たして日本協会はこの敗戦をどう受け止め、吉武監督の処遇も含めてどう舵を切るのか。単に世代別代表の監督人事にとどまらず、未来の日本サッカーを占ううえでも、ここが重要な決断になるのではないかと思っている。