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人工芝のドーム球場は時代遅れ!?
筒香の事故から考える、“芝”問題。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/08/24 10:40
カナダ、トロントにある「ロジャーズ・センター」。世界初の開閉式ドームスタジアムとして、1989年に開業した。ここを本拠とするチームにはMLBのブルージェイズのほか、CFLのトロント・アルゴノーツがある。
元は集客、収益のための新球場建設だった。
元々、メジャー球界に新球場の建設ラッシュが起こったのは、選手の身体的負担を軽減させるためではなかった。
ラグジュアリー・ボックス(飲食などフルサービス付きの個室観戦スペース)や娯楽施設等を完備することで集客性、収益性を高めるために建設された新球場が、結果的に選手にも安全という実益をもたらしたことになる。
なぜ、日本では人工芝に対して何も論じられないのか。
再度日本に目を転じよう。
NPB12チームで、天然芝球場を使っているのは広島と阪神の2チームしかない(オリックスも使用しているがすべてのホーム試合ではない)。
梅雨が存在する日本では、運営面や営業面を考えれば、確かにドーム球場、人工芝球場を使用する方が便利であるのは間違いないのだろうが、米国の降水量が多いといわれるクリーブランドでも、屋根もない天然芝球場できちんとシーズンを消化し続けている。
選手の負担軽減、パフォーマンス向上という意味でも天然芝球場への移行は今後日本でも必要になってくるだろう。
さらに、次回のWBC制覇を公言するNPBとしても、準決勝、決勝は必ず天然芝球場で戦うということになるのを考慮すれば、普段から天然芝球場でプレーできる環境を整えることも、決して軽んじられることではないはずだ。
今回の筒香のアクシデントを一義的に捉えるのではなく、メディアを含めた日本球界でもこうした視点から論議を起こしてほしいと感じている。