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“超スローカーブ”をもう一球。
東海大四・西嶋亮太の才能と努力。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2014/08/19 16:30

“超スローカーブ”をもう一球。東海大四・西嶋亮太の才能と努力。<Number Web> photograph by Kyodo News

SNSなどでも大きな話題となった東海大四・西嶋亮太の超スローカーブ。プロ野球、メジャーにも使い手がいる球種でもある。

西嶋の投球に賛辞を惜しまなかった相手監督。

 超スローカーブばかりが注目されたが、それがなくとも西嶋は十分全国クラスのピッチャーだった。

 山形中央の監督、庄司秀幸は賛辞を惜しまない。

「技巧派という印象があるかもしれないけど、彼は速球派の投手。前の試合でも、ストレートの見逃し三振が多かった。あれ(超スローカーブ)はフェイク。高校生離れした投球術と、精神力ですよ。うちもあの残像に惑わされ、真っ直ぐに押されてしまった」

 西嶋は延長10回、2点を失い、なおも2死二塁と攻め立てられた場面でも、山形中央の中心打者、3番・永井大地から135kmの真っ直ぐで空振り三振を奪った。

 永井が振り返る。

「ここぞというときの真っ直ぐは迫力があって、圧倒されてしまった」

 西嶋が超スローカーブを練習し始めたのは2年秋だ。スローボールだとあれだけ大きな放物線にならないため、カーブ回転をかけてできる限り高くボールを上げた。毎日約1時間投げ込んだが、あれだけの高度を稼ぎ、かつ距離を合わせるのは容易ではなかった。

「最初はほとんど手前に落ちて、実戦ではなかなか使えなかった」

 回転数や最高点に達する位置を変え、少しずつピンポイントで落とす感覚をつかんだ。

「ぼくの中では、いちばん難しいボールです」

 この試合は、たった1球しか魅せなかったが、西嶋の才能と努力がつまった1球だった。

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