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開幕前の優勝候補が降格圏目前に!?
セレッソを襲った「怪談」の理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO SPORT
posted2014/08/02 10:40
W杯で内田とともに安定したパフォーマンスを見せた山口蛍だが、柿谷を欠き、バランスを失ったセレッソの復調はまだ成し遂げられていない。
山口蛍「キャプテンとして責任を感じる」
「守備的に戦うとどうしてもうしろに比重が行ってしまうんで、攻撃になった時の攻め手が少なくなってしまう。守ってカウンターを狙うんなら曜一朗くんをトップに置いた方がいいと思うけど、サイドにおるんで曜一朗くんの良さが活きてない。縦1本で得点を取るパターンができなくなっているし、どうやって点取ったらいいのか、みんな悩んでいる。キャプテンとして勝てないことに責任を感じるし、なんか歯痒いです」
W杯中断前の最後の試合となった浦和戦に0-1で敗れた後、山口蛍は、苦しい胸の内をそう明かした。
セレッソらしさが消え、昨年まで積み重ねてきたものが出せなくなった。そして6月、ポポヴィッチは解任された。
「元に戻す」ことすらも簡単ではない理由とは。
後半戦の巻返しに向け、新しく監督に招聘されたのがマルコ・ペッツァイオリだった。新監督が志向するシステムは4-1-4-1、4-3-3でアンカーを置くスタイル。ブラジルW杯で優勝したドイツのようにハイプレスをベースにし、ボールを高い位置で奪って早く攻めるやり方だ。
だが柿谷の移籍もあり、「監督交代」というカンフル剤も今のところ効いていない。新監督になって2分2敗、ゴールは4試合で3得点。ここ2試合は完封されており、チャンスは作るがフィニッシュの精度に欠け、得点力不足も解消されていない。また、横浜F・マリノス戦や鳥栖戦では、アンカーの扇原貴宏の横のスペースや彼が前に出た時のスペースを使われてピンチを招くなど、守備も互いにフォローし合い、チームとして機能するまでには至っていない。
クルピ時代の良さを出そうという空気も感じられるが、キープレイヤーの柿谷がおらず、単純な回帰すらも簡単ではない。
というのも、過去に同じような例があるのだ。
2012年、ガンバ大阪はセホーン&ロペス体制が早々に崩壊し、生え抜きの松波正信が監督に就任した。松波はカウンターからパスサッカーにスタイルを戻したが、結局最後まで調子を取り戻せず、ガンバはJ2に陥落した。サッカーは、かくも繊細なスポーツなのだ。