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「全英は2番アイアン」は本当なのか?
松山、石川が貫く定説破りの“信念”。
posted2014/07/17 11:25
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Jun Hiraoka
ロイヤルリバプールで2番アイアンをバッグに入れていない選手は、あたかも丸腰で厳しい戦いに挑もうとしているのではないかと思えてしまうぐらい、開幕前の会場には「2番アイアン」という言葉が木霊している。
この地で開催された'06年大会で、タイガー・ウッズがドライバーを1度しか使わず、ティショットにドライバー以外の2番アイアンなどを駆使して勝利したため、それが今年の出場選手たちの手本となり、スタンダードと化しているのだ。
地面が固く、表面がでこぼこで、しかも狭く細いフェアウエイ。100個近いポットバンカーがそこここに点在している。そんなコースをドライバーで攻めていくのは、確かに冒険であり、危険すぎるのかもしれない。昨年覇者のフィル・ミケルソンも「この全英用に2番アイアンをバッグに入れた。ティショットをいかに飛ばさず、コンサバティブに打っていけるか。そして、セカンドショットをいかに長いクラブでアグレッシブに攻めていけるか。それがカギになる」と、ロイヤルリバプール攻略法を滔々と語った。
世界ランク1位の“本能的”なアプローチ。
しかし、世界ランキング1位に君臨している現在のゴルフ界の王者、アダム・スコットの考え方は、タイガー流でもミケルソン流でもない。
いや、2番アイアンをバッグに入れてロイヤルリバプールに挑むという意味ではスコットも同じなのだが、ミケルソンの2番アイアンが全英用の特別なクラブであるのに対し、スコットの2番アイアンは通常の慣れたクラブ。その違いは、きわめて大きい。
「僕は1年中、ほぼ毎週2番アイアンをバッグに入れている。大切なのは、どのクラブでティショットを打つかということより、どれだけ慣れたクラブで打っていけるかということ。ヤーデージブックを見てクラブを選ぶのではなく、どれだけ本能的にインスピレーションに従ってクラブを選べるかということ」
スコットは王者の貫禄を漂わせながら、きっぱり、そう言い切った。