ブラジルW杯通信BACK NUMBER
戦意なきブラジルがオランダに0-3。
「無意味な3決」で再びえぐられた傷。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2014/07/13 13:25
3位決定戦ではベンチ入りをすることでチームを鼓舞したネイマール。ドイツ戦では「こんなクソみたいな試合なんか見たくない。ポーカーでもしようぜ」と言い放ったが……。
勝利を確信したファンハールはGKまでも交代。
中盤であっさりとボールを奪われると、オランダにサイドを崩され、ゴール前でフリーのジョルジニオ・ワイナルドゥムに合わされて再び失点。スタンドのどこかで大きな爆発音が轟き、ブーイングは一層強く鳴り響いた。
このゴールで勝利を確信したオランダの指揮官は、今大会唯一出場機会のなかったGKミシェル・フォルムを投入。容赦のないダメ押しの一手によって、ブラジルのプライドはズタズタに切り裂かれた。
試合直後、孤軍奮闘したオスカルが目に涙を浮かべながらインタビューに答える。
「言葉にならないほど失望している。チャンスも作ったが、ゴールを奪うことができなかった。説明ができない。言葉にならない」
続いて、試合が壊れるきっかけを作ってしまったチアゴ・シウバがマイクに向かう。
「失望している。W杯で優勝する瞬間を夢見ていた。国民に謝りたい。最後はブーイングだったけど、サポーターにも気持ちがあるから仕方がない」
「これはオランダの試合ではない」(ロッベン)
オランダはロッベン。試合に勝ったことによる爽快感はあるが、張りのある声とは裏腹に、複雑な表情を浮かべた。
「気持ち良く勝つことができたが、失望もある。決勝にあれほど近づいていたことを考えれば、良かったとは言えない。今日は普段とは全く異なる試合。これはオランダの試合ではない。ただ、このチームを誇りに思っている。すべてを出し切ったよ。3位という結果は、オランダ国民全員で勝ち取ったものだと思う」
ロッベンの言うとおり、オランダにも“らしさ”はなかった。ブラジルが立ち上がりの2失点で戦意を喪失してしまったのだから、それと対峙するオランダが“らしさ”を出しきれなくても無理はない。それでも、ダメ押しの3点目を記録したワイナルドゥムを始め、今大会で若いタレントが急成長を遂げたことは大きい。結果論だが、この大会を勝利で終え、3位という結果を勝ち取ったことの意味は後からじわじわと湧いてくるだろう。勝ちさえすれば、3位決定戦は決して無駄ではない。
一方、ブラジルにとっては悲劇の延長でしかなかった。