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セリエA得点王は、伊達じゃない。
インモービレはイタリアを救うか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/19 10:30
イングランド戦では後半28分からバロテッリに代わってピッチに立ったインモービレ。ドリブル、ミドル、ワンタッチとあらゆる形でゴールを決める生粋のストライカーだ。
イタリアには“ラッキーボーイ”の系譜がある。
W杯でのイタリアには、逆境をはね返す“ラッキーボーイ”が度々出現してきた。
'82年スペイン大会では、八百長疑惑の渦中から招集されたパオロ・ロッシがブラジル戦でハットトリックを達成。名将ベアルゾットの信頼に見事応え、イタリアを3回目の優勝に導くと、ロッシは大会得点王にも輝いた。
地元開催の'90年イタリア大会で英雄となったFWスキラッチも、本大会前の代表実績はほぼゼロだった。
ベンチスタートだったオーストリアとの初戦で値千金の決勝ヘディング弾を決めると、イングランドとの3位決定戦を含む6試合で得点を重ね、母国の牽引役に。自身も大会得点王の座に就いた。
セリエA得点王は伊達じゃない。
今大会も、イタリアに対する下馬評は決して高いとはいえない。
イングランドとの初戦に快勝したものの、代表監督プランデッリは、故障者続出で戦術プランの大幅変更を強いられている。
現代表の中心に据えられてきたFWバロテッリは、イングランド戦の決勝点を挙げたが、股関節痛を抱えた状態で完調とは言いがたい。実際、問題児FWの代表での得点は8カ月ぶりだった。
「このチームの全員がスタメンだ。大会では必ず全員の力が必要になるんだ。信じてほしい」
バロテッリとインモービレの2トップ起用には難色を示すも、プランデッリはチーム総動員体制を強調する。是が非でも勝ち点3を取りたいコスタリカとの2戦目で、背番号17を1トップとして先発させる英断はあるか。
インモービレは、静かな気迫を漲らせている。
「先発させてもらえたら、とはいつも考えている。大事なのは、いつでも自分の仕事ができる状態でいること。途中出場だったら、尚更そうだ。俺はチームのためにプレーする。どんな形であれ、試合には覚悟を決めて臨もうと思う」
グループリーグは二巡目に入った。世界各国のトップスコアラーたちが、ブラジルの地でゴールの競演を続けている。
セリエA得点王は、伊達じゃない。
インモービレよ、その実力を王国の満天下に示すのだ。