ブラジルW杯通信BACK NUMBER
セリエA得点王は、伊達じゃない。
インモービレはイタリアを救うか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/19 10:30
イングランド戦では後半28分からバロテッリに代わってピッチに立ったインモービレ。ドリブル、ミドル、ワンタッチとあらゆる形でゴールを決める生粋のストライカーだ。
恩師ゼーマンが語るインモービレの「美点」。
「あやつは生まれついてのストライカーよ」
紫煙を吐いて目を細めるのは、2年前にインモービレがセリエB得点王を獲ったときの指導者ゼーマン(前ローマ)だ。
滅多に弟子を褒めない攻撃サッカーの権化は「インモービレはリーグ戦37試合で28点“しか”獲らなかった。1試合につき1ゴールは奪えたはずだ」と今も厳しい。
だが、孫のような年齢の愛弟子に対する名将の言葉は熱い期待の裏返しなのだ。インモービレは無論、それを承知している。
ゼーマンは、自身の下で得点センスを開花させたインモービレが、ブラジルW杯で活躍することを願わずにはいられない。
「今季はトリノできちんとセンターフォワードとして起用されたから、セリエAでも得点王を獲れた。ゴール前でのクレバーさを保ちながら、体を張って闘えることがやつの美点だ。シュートを躊躇しないのがいい」
結婚、移籍……。しかし今はW杯に全てを捧げる。
インモービレの人生は急加速している。
5月下旬、代表合宿中だったが公休をもらい、すでに一女をもうけている婚約者ジェッシカと念願の結婚披露宴を行った。
新天地ドルトムントへの移籍も決まった。ブラジルへ渡る前の6月2日に、5年契約へサインし、クロップ監督の熱烈歓待を受けた。インモービレの戦場は、来季からブンデスリーガだ。
ただし、遠く大西洋を隔てたブラジル入り以降、インモービレは代表に集中している。リオデジャネイロ南方にある合宿地マンガラチバで毎日汗を流し、休養にも神経を使いながら、トップコンディションをキープしているのだ。