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コートジボワールの“神”、ドログバ。
国民が寄せる絶対的信頼感の源とは。
posted2014/05/19 10:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
「実力は元より、彼のカリスマが欠かせない」
これは、2010年W杯でコートジボワール代表を率いた、スベン・ゴラン・エリクソンのディディエ・ドログバ評だ。当時のドログバは、既に32歳のベテランFWだった。それから更に4年。大ベテランとなった現在でも、ドログバの重要性は低下していない。
無論、加齢による走力の衰えは隠せなくなっている。最終ライン裏のスペースを駆け抜ける機会は減り、必然的に得点数も減っている。だが、エリクソンが重視した「オーラ」の源は大舞台での勝負強さであり、その持ち味は前大会以降も変わっていないのだ。
チェルシーでの最後を、クラブ史上初のCL優勝を決めるPKで締め括ったのは2年前のこと。そもそも、バイエルン・ミュンヘンに攻め込まれ、リードも奪われたチェルシーが、延長を経てPK戦に持ち込むことができたのはドログバのおかげだ。
フルタイム2分前に訪れたラストチャンス、頼れるセンターFWはニアポストに届いたCKを同点のヘディングシュートに変えた。その2週間前には、自身4回目のFAカップ優勝を自らの決勝点で実現している。FAカップ決勝全4試合で得点者となった選手は、140年を越す大会史の中でもドログバしかいない。
「ワールドクラスのまま」と評したモウリーニョ。
昨年1月に上海経由で移籍したガラタサライでも、ここ一番では強さを見せた。好例は、下馬評を覆して突破を果たした今季CLグループステージでのユベントス戦。グループ2位を競った格上との直接対決2試合で、ドログバは1ゴール2アシストで4ポイント獲得に貢献している。
特にポストプレーによる2度の得点演出には、ドログバらしい絶対的な空中戦での強さと落としの巧さが見て取れた。決勝トーナメント1回戦では、戦力に勝るチェルシーが順当勝ちを収めたが、その古巣で指揮を執るジョゼ・モウリーニョが、対戦を前に「ワールドクラスのまま」とガラタサライのストライカーを評したのは、元自軍エースへの敬愛の念からだけではなかったはずだ。