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<ボストンで得た自信と信頼> 田澤純一 「パワーピッチで堂々と」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byYukihito Taguchi
posted2014/05/12 11:00
M・カブレラを抑えた田澤があぶり出す日本球界の問題。
昨年のア・リーグのリーグ優勝決定シリーズ。2012年の三冠王で最強打者と言われるデトロイト・タイガースのミゲル・カブレラ内野手封じで、田澤は3度、マウンドに送り込まれた。そうしていずれも初球真っすぐで勝負し、3度とも抑えきった。
「日本のファンにはボクのそういうところを観てもらえればいいのかな、と思います」
あくまで初球からストレートで勝負を挑む。これが田澤の81年目の約束だった。
そして最後にもう一つ、田澤を語るときに、どうしても触れざるを得ない日本球界の問題があることも忘れてはならないだろう。
日本のドラフト指名を拒否してメジャーに挑戦した選手は、大学、社会人が2年、高校生が3年、日本のプロ野球復帰を認めないといういわゆる“田澤ルール”が存在する。閉塞した日本球界の現況を象徴するようなこの不合理なルールに風穴を開けられるとすれば、それもまた、この右腕のメジャーでのさらなる活躍しかないはずである。