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巨匠・ピルロの“呪われたFK”。
積み上げた42本は至高の切れ味。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/04/02 10:30
第28節ジェノア戦、土壇場でフリーキックを決めるピルロ。
パリューカ「いっそのこと壁を作らない方がいい」。
GKたちは“呪われたFK”をどう防げばいいのか。
今季、レイナ(ナポリ)といった経験豊かなベテランや、進境著しい若手ネト(フィオレンティーナ)も呪いの犠牲者リストに加わった。往年の名GKパリューカは「あの忌々しいFKを止めるにはボールの出どころを見極めなくては。そのためには、いっそのこと壁を作らない方がいい」と極論を唱えるほどだった。
長いキャリアの間に、ピルロはイタリア代表での8本を含む合計42本のFKを決めてきた。自身のベストFKは、昨年のコンフェデレーションズ杯での1本だという。
最終的に2-1で勝利した大会初戦のメキシコ戦は、ピルロにとって特別な試合だった。壁5枚を越える25m先制弾で、自身のイタリア代表通算100試合出場という金字塔を祝った。
試合会場は誰もが憧憬を抱く“サッカーの神殿”マラカナン・スタジアム。寡黙なピルロが「夢にも思っていなかった」と声を上ずらせた。
今季の最終節の翌日に、ピルロは35歳になる。
今季のセリエA最終節の翌日、ピルロは35歳になる。
ヴァスコ・ダ・ガマでプレーしていたMFジュニーニョは、今年1月に引退を発表した。
ピルロも昨年のうちに「ブラジルW杯を最後にアズーリから身を引く」と表明していたが、最近のインタビューで代表引退をあっさり撤回した。ユベントスとの契約も2016年までの延長合意が近い。
「自分の年齢が話題にされるのは当たり前。でも、コンディションはいいし、自分の道を行くだけさ。スクデットとELの2冠は獲るよ」
右足から放たれたFKが相手ゴールを陥れた瞬間にのみ、ピルロは抑え込んでいる闘志を発散する。
飄々としているようで、実は誰より勝負事にこだわるからこそ、彼の“マレデッタ”は一級品の切れ味を保ち続ける。FKの魔法使いは、いまだ衰えることを知らない。