スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
凋落のベティスと復活のセビージャ。
セビリアダービーの天国と地獄。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMARCA MEDIA/AFLO
posted2014/03/27 10:30
3月20日のセビリアダービー、PK戦で決着がついた瞬間にセビージャは歓喜に湧き、ベティスは絶望に包まれた。
ベティス5人目のキッカー、ノノがゆっくりとした助走から蹴ったボールがGKベトの指先をかすめ、ゴールポストのすぐ脇へと流れていく。
ヨーロッパリーグ(EL)の8強入りを賭けた決勝トーナメント2回戦。史上初めてヨーロッパの舞台で実現したセビリアダービーはPK戦までもつれ込んだ末、セビージャの勝利で幕を閉じた。
敵地でベティスが0-2と先勝した第1レグ、同じく敵地でセビージャが2点のビハインドを盛り返した第2レグ、そしてお互い極限状態の中で、意地と意地をぶつけ合った30分間の延長戦。
ダービー史上最も長い210分間の激闘は、両クラブのファンにかつてないほど大きな感情の起伏をもたらした。その光景は両チームのファンならずとも心を打たれる素晴らしいものだっただけに、その決着をPK戦でつけなければならなかったことが残念でならない。
「今季の運命はあまりにも残酷だ。我々は人々に希望をもたらしたが、その希望は悪夢へと変わってしまった」
試合後、ベティスのカルデロン監督は寂しげにそう語っていた。彼の言う通り、2点のリードを追いつかれ、PK戦の末に決まった敗退は今のベティスにとってあまりにも残酷な結末だった。
EL出場を決めた昨季の躍進から一転、深刻な不振に。
'05-'06シーズンのCL出場以来となるヨーロッパ行きを決めた昨季とは一転し、今季のベティスは低迷の一途を辿ってきた。
昨季まで攻守の要として活躍してきたベニャとカニャスを放出した中盤の再構築がままならず、得点源のルベン・カストロが腰痛で出遅れたこともあってシーズン序盤のつまずきは想定の範囲内だった。だが、その後に陥った長期の不振は当初の予想を大きく上回る深刻なものとなる。
7節ビジャレアル戦で今季2勝目を挙げたのを最後に3分11敗と14試合も未勝利が続く中、13節バルセロナ戦以降は最下位を独走。その間には3シーズン半チームを率いたホセ・メル監督、後任のガリード、強化責任者のストシッチらが相次いで解任された。
'80年代に選手としてベティスで活躍したカルデロンが就任した後も、2勝2分5敗(29節終了時点)と成績は伸びず、順位は最下位のまま。残留圏との勝ち点10差も就任時と変わらず、残り9節でこの差を覆すのは現実的に見てかなり難しいと言わざるを得ない。