スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
凋落のベティスと復活のセビージャ。
セビリアダービーの天国と地獄。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byMARCA MEDIA/AFLO
posted2014/03/27 10:30
3月20日のセビリアダービー、PK戦で決着がついた瞬間にセビージャは歓喜に湧き、ベティスは絶望に包まれた。
PKの宝くじは、勝てば天国、負ければ地獄。
ただ、やはりその代償は大きかった。前後の国内リーグを含めて、怪我でカロ、ディダク、ペルキス、セドリックらを次々と失うことになったからだ。
ダービーの3日後、アトレティコ・マドリーをホームに迎えたベティスは健闘も空しく0-2で敗戦。しかも前半途中でアマジャが負傷、後半にはブライアン・ロドリゲスを退場で失ったことで、カルデロンはさらに厳しい状況で残り9試合に臨むことになった。
一方、エメリはこの1週間で天国と地獄の双方を味わった。
ホームの第1レグで敗れた後にはその采配がやり玉に挙げられ、第2レグで逆転できなければ来季の続投はないだろうとまで言われた。ところがダービーで逆転勝利を成し遂げると、一転して「ほどなくエメリと契約延長」と持ち上げられはじめたのである。
ベティスがアトレティコに敗れた同日、セビージャは主力数人を温存して臨んだアウェーのオサスナ戦にてクラブ記録タイの国内リーグ5連勝目を挙げ、今季初めて5位まで順位を上げた。
勝てば天国、負ければ地獄。宝くじに例えられるPK戦の結果がここまで両チームに対照的な影響を及ぼすのも、スペインで最も熱いと言われるセビリアダービーの魔力である。