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CL8強も、モイーズの目は来季へ。
マンU「復興プラン」に香川の席は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byMan Utd via Getty Images
posted2014/03/20 12:00
25分、45分、52分とゴールを決め、ハットトリックを達成したファンペルシ。前回のオリンピアコス戦ではチームメイト批判で騒動を起こしたが、汚名返上の大活躍となった。
モイーズのマンUの核はルーニーとファンペルシ。
その後、勝利の必要性が高まるばかりの状況では、指揮官が誰であってもレギュラー候補を試している場合ではない。ドリブル突破の魅力を持つ19歳のアドナン・ヤヌセイが積極的に起用されているように、独力で戦況を変えられる個人技があれば話は別かもしれないが、残念ながら香川はそのタイプの攻撃的MFではない。
モイーズのマンUの核は、契約延長を決めたルーニーと、契約延長が噂されるファンペルシの両名だ。今回のオリンピアコス戦でも、前者はセカンドストライカー兼第5MFとして1アシスト以上の貢献。後者はハットトリックを達成して期待に応えている。
そして両主軸のサポート役として、マタが起用できないCLではダニー・ウェルベックとアントニオ・バレンシアが先発した。モイーズは、マタに通じる香川の巧妙さではなく、最終ラインの裏を狙い、かつ守備に加勢するための走力を選んだ。先制点は欲しいが、致命的な失点は避けたかった心境を考えれば妥当な采配ではある。
さらに指揮官の意図するスタイルが、ウェルベックやバレンシアのようなタイプが生きる、より直線的な攻撃的サッカーであることも事実だろう。
ウェルベックが背後のエブラへのカバーで疲れが見えてきても、バレンシアが前半早々のアクシデントで左目を腫らしていても、2人とも80分前後までピッチに立ち続けた。
香川についてのコメントはリップサービス?
その香川の出場機会について、「今後は増えるだろう」というモイーズのコメントが出回ったのは3月上旬のこと。しかしシーズンも残り2カ月の大詰めに差し掛かり、控え組のモチベーションを高めようと努める監督はいても、ベンチが続くなどと言う監督はいない。
確かにオリンピアコス戦の終盤に担架で退場したファンペルシの怪我の度合いによっては、ルーニーのセンターFW起用で香川出場の可能性が上がることは考えられる。それでも、今季が終わる頃には、200億円を超えると言われる今夏の補強予算の一部として「香川放出」が再び噂されることになるのだろう。
2年前に実現した“和製ナンバー10”のマンU入りは、日本人の身としては漫画の世界から実世界に届いたような衝撃的な吉報だった。だが、どうやらマンUの香川は“ポテンシャル”の世界で終わってしまいそうだ。モイーズが本格的に「復興」を推進する来季、香川は新天地で「復活」を期すという現実は避けられそうにない。