ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
知らないペップがそこには何人もいた。
~知将『グアルディオラ』の半生記~
text by
![幅允孝](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byRyo Suzuki
posted2014/03/24 10:00
![知らないペップがそこには何人もいた。~知将『グアルディオラ』の半生記~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/350/img_362a5d3094ee45e4424ae77f50a903f0409203.jpg)
『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』グイレム・バラゲ著 田邊雅之監訳 フロムワン 1800円+税
フットボールの翻訳本を読んで、この歯ごたえ。『I AM ZLATAN』以来である。イブラヒモビッチの本が、あらゆる意味でサッカー選手の自叙伝像を壊してしまったのは、既読の方なら納得してくれる事実であろう。文学たらんとした文学より、よっぽどエネルギッシュな人間の描き方と流れるようなストーリーテリング。そして、その本の中では、最も酷い言われようだったペップ・グアルディオラなのだが、彼自身の半生記では、あの軋轢がどう書かれているのか?
というのが、最もわかりやすい本書への導線なのだろう。だが、その部分での魅力は氷山のほんの小さな一角に過ぎない。バルセロナから70kmほどにあるサントペドルの田舎から、ひょろっと痩せた煉瓦屋の息子がラ・マシアに入り、クライフ監督の黄金期を支える。そして、クラブの飽和と若手の台頭とともに、イタリア、メキシコへと渡り歩き、引退後に心のクラブに帰還。彼がバルセロナの監督に導かれるまでは、偶然と必然が美しく編み合わされた小説のようだ。
![](https://number.ismcdn.jp/common/images/common/blank.gif)