モイーズの視線はすでに来季へ向けられている。

　前半2得点の立役者は、大ベテランのライアン・ギグスだった。ロビン・ファンペルシが奪ったPKと、ウェイン・ルーニーが決めたアシストは、ギグスの左足によるピンポイントのロングパスから生まれたものだ。だが40歳の選手兼コーチは、試合前に噂された監督との衝突がなくともピッチ上での残り時間が限られている。

　実際にモイーズは「チームの将来に関して明確な考えと意志がある。然るべき時がくれば（ギグスの処遇を）実践に移す」と試合前に強調していた。もちろん、自身の解雇説を否定する狙いはあったはず。

　だが指揮官は、決して出来の良くなかったチェルシーに完敗（1－3）した1月の段階で、対外的には「首位フィニッシュを目指すのみ」と発言しつつも、内心では来季以降への意識をより強めていたのだろう。オリンピアコスとの決戦に臨む意気込みも、今季に残された唯一のタイトルを目指すためではなく「必ずや訪れるマンU復興に弾みをつけるため」というものだった。

モイーズの「復興」プランから漏れた香川真司。

　但し、その試合でも出番のなかった香川真司は、いよいよモイーズの「復興」プランには含まれていないようだ。

　今冬のフアン・マタ獲得を以て、2列目スタメン候補としての香川の「アピール期間」は終了したと言ってもよい。攻撃面での巧さと守備面での弱さという長所と短所も似ている両者だが、マタはチェルシーでの過去2シーズンで記録した、18ゴール25アシストというプレミアでの「実力証明書」を持つ。マンUでも移籍直後に5試合で3アシストをこなし、ファン投票によるチームの月間MVPに輝いた。

　これに対して香川は、出場機会を得た試合で新監督の信頼を勝ち取ることができなかった。素早いターンやスペースをつくパスで才能の片鱗を窺わせることはあっても、レギュラーの条件である「安定した働き」を示すことができなかった。

　例えば、昨年11月後半のCLレバークーゼン戦（5－0）で活躍したかと思えば、翌月1日のトッテナム戦（2－2）では存在感を欠くという具合。年明けにはルーニー負傷欠場の穴を埋められず、チームは連敗を経験した。

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