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リプニツカヤ、コストナーらが参戦!
世界選手権、日本女子のライバルは? 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2014/03/19 10:40

リプニツカヤ、コストナーらが参戦!世界選手権、日本女子のライバルは?<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

ソチ五輪でフィギュア界のスターに躍り出たロシアの15歳リプニツカヤ。メダルを逃したシングルでは悔しさをあらわにしていただけに、世界選手権へ向けて期すものがあるに違いない。

ソチメダリストとして、唯一登場するコストナー。

 1位のソトニコワと2位のキム・ヨナが不参加と発表された中で、3位だったイタリアのカロリナ・コストナーは唯一のソチ五輪メダリストとして世界選手権に出場する。

 気持ちの優しさ、温かい人柄がその演技にも表れるコストナーは、常に順位よりも演技の内容にこだわるスケーターだった。だがその彼女が、ソチの個人戦SPでは本番でいきなりフリップからトウループへとコンビネーションジャンプの難易度を上げて、勝負に出た。

 ソチの会場で見ていたスケート関係者の間では、その出身国に関わらず、優勝にふさわしいのはコストナーだったという意見がもっとも多かった。だが韓国からの強い抗議に、ロシア叩きの機会を逃さない北米メディアが便乗し、キム・ヨナが優勝に相応しかったという論調の報道が相次いだ。

 コストナーは女子の花束授与式で、大人の彼女らしくソトニコワを支えるように背中に手を回して、先輩らしい思いやりを見せた。だが彼女の心の奥底で、3位という結果をどのように受け止めたのかはわからない。

 27歳のコストナーにとって、埼玉は最後の世界選手権になるかもしれない。スケーターとして、競技者として、そして芸術家としての彼女が、どのような演技を見せるのか。彼女が最高の演技を見せたとき、ジャッジはどのような評価を与えるのか。彼女の集大成に相応しい演技を見ることができるかもしれない。

サイボーグから、レディへと変貌を遂げたゴールド。

 ソチ五輪で総合4位と表彰台に迫った18歳のグレイシー・ゴールドも、埼玉世界選手権のメダリスト候補の一人である。難易度の高い3ルッツ+3トウループをこなすジャンプ技術、教本のような美しいポジションのレイバックスピンなど、その能力の高さは、ジュニアの頃から注目されてきていた。

 だが今シーズンの彼女が一皮剥けた理由のひとつには、9月から指導を受けるフランク・キャロルコーチの存在も見逃せない。

 米国のコーチの中でも長老格であるキャロルは、ミシェル・クワンやエヴァン・ライサチェックなど多くの過去のチャンピオンを育ててきた。紳士で知られるキャロルは、スケートだけではなく、生徒の普段の練習態度なども重要視し、自分のポリシーに合わないと判断すると、情け容赦なく生徒をくびにする。

 そんなキャロルのポリシーは、「レディーズ・チャンピオンなら、レディーらしく優雅に滑るべき」。彼のところに来た当時のゴールドは、「まるでサイボーグのように、ジャンプからジャンプへと急いて滑るスケーターだった」と言う。

 その彼女をキャロルは、巧いだけではなく、美しいスケーターへと変身させた。その端麗なルックスも注目され、現在世界中の関係者がゴールドのこれからの成長を楽しみに見守っている。埼玉で彼女が表彰台に到達できるかどうか、要注目だ。

 五輪のシーズンの世界選手権は、これまでの4年間の締めくくりであると同時に、新たな4年の幕開けでもある。ベテランたちの最後の舞台と、若手たちの初舞台が混在する中、いずれにしてもエキサイティングな戦いになることは間違いないだろう。

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