オリンピックへの道BACK NUMBER
男子バレー、描けなかったビジョン。
新監督に残された3年間という時間。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/02/23 08:15
全日本男子バレーの監督に就任した南部正司氏(左から2番目)。男子復権へ向け、大改革へ意欲を見せた。
浸透までに時間がかかるのは予想できたはずだった。
長年、アメリカで指導にあたってきた人物だ。どのような手法であったかは、おそらくは相当に知った上での依頼であったはずだ。
実際、就任時の会見では、協会側から、データを重視した論理的な指導などへの期待が語られた。
サトウ氏自身は、「スマートバレー」を掲げた。具体的には、正しい状況判断ができ、プレーの成功率を上げていくことである。また、自主的に取り組むことができる選手を選考では重視するともしていた。
つまり、選手個人の判断力を上げていくことや意識の引き上げに眼目のひとつはあった。
前任の植田辰哉監督の8年の指揮とは異なる方向性を打ち出すことを意味していた。
それだけに、浸透するまでに時間はかかるのも予想はついただろう。
全敗に終わったワールドグランドチャンピオンズカップ後に、続投させる意向を示していたのも、それを理解していたからだったように思える。
だが、それは覆った。
監督選びの際のビジョンを描ききれていなかったのでは。
どこまで辛抱するか、委ねるか、あるいは見切りをつけるのか。その判断は容易ではない。時間をかけて実ることも実らないこともある。
いや、監督交代の発表をした会見での言葉からすれば、そもそもの手腕に疑問を感じ取ったからだと読み取れる。
であるとすれば監督選びの際、どのような全日本を望んでいるのか、そのために必要なのはどのような監督なのか、ビジョンを描ききれていなかったということではないか。
ロンドン五輪出場を逃したのをはじめ、この数年の全日本男子の置かれた位置からすれば、リオデジャネイロ五輪までの3年は、決して余裕がある時間というわけではない。広がりつつある海外諸国との差を思えば、強化の時間はわずか3年しかないと言えるかもしれない。
サトウ氏の就任と退任はいろいろと検証されなければならないところも多い。
ともかく、むやみに試行錯誤し続けるわけにはいかないのが日本だ。残る期間を無駄にすることはできない。