ソチ五輪EXPRESSBACK NUMBER
羽生結弦、歴代最高点でSP首位!
チャンとのFP決戦を完全シミュレート。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/02/14 11:45
演技前の羽生結弦は、見ている者にもその集中が伝わるほどの表情だった。史上初の100点越えで首位ターンに成功し、世界の頂点をかけてフリーに挑む。
羽生結弦の勢いが止まらない。フィギュアスケートの男子ショート、羽生はすべてのジャンプを成功させ、史上初の100点超えとなる101.45点で首位発進した。パトリック・チャン(カナダ)はトリプルアクセルの着氷が乱れて97.52点で約4点差につけた。3位以下は、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)が86.98点、高橋大輔が86.40点と続き、11位の町田樹まで、3.5点差に9人がひしめき合う。
戦いの構図は、優勝争いの2人と、銅メダル争いの9人という見方が現実的だろう。では羽生は日本男子史上初となる金メダルをもたらすことが出来るのか、改めて検証する。
ショート(SP)を終えた時点で、羽生とチャンの点差は3.93点。フィギュアスケートのフリー(FP)では、十分に逆転もあり得る点差だ。細かく点数を見ると、パーフェクトを達成した羽生は総要素点(技術面)が54.84点で、演技構成点(表現面)が46.61点と、ジャンプ力に頼る比重が大きい。一方のチャンは、総要素点50.34点で、演技構成点が47.18点だ。ジャンプにミスがあって演技が一瞬途切れた部分があっても、演技構成点は羽生を上回った。
チャンの演技構成点への高評価は揺るがない。
つまり、チャンが持つ「スケーティング技術」や、複雑なステップの織り込まれた「つなぎ」、そしてリンク全体をくまなく滑る「振り付け」などへの高評価は、1つミスした程度では揺るがないことを意味する。チャンがミスなく滑った場合、この演技構成点での格差はさらに広がり、4点差を覆してくることは、おおいにありうる。
実際のところ、チャンは自分の演技直後は非常に落ち込んだ様子で、コーチに慰められながら得点を待つ「キス&クライ」に座った。しかし97点台という得点を見た瞬間、笑顔になり目を輝かせた。
「2位スタートなのは全く気にならない。団体戦では89点台だったのに、今日は97点台を出せた。しかもトリプルアクセルが乱れたのに97点台とは! ユヅルの101点台は凄いけれど、まだ誰もフリーをやってない段階だ。僕は自分のペースで、自分のやるべきことをやればいい」と語り、ミスがありながら高得点という状況で、自信を付けた格好になった。