ソチ五輪EXPRESSBACK NUMBER
羽生結弦、歴代最高点でSP首位!
チャンとのFP決戦を完全シミュレート。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/02/14 11:45
演技前の羽生結弦は、見ている者にもその集中が伝わるほどの表情だった。史上初の100点越えで首位ターンに成功し、世界の頂点をかけてフリーに挑む。
2人ともパーフェクトの演技だった場合、何点が出るのか。
では2人ともパーフェクトだった場合、どれくらいの点数が出るだろうか。今季、チャンは11月のフランス杯でパーフェクトを達成し、196.75点をマークした。一方の羽生は、12月のグランプリファイナルが自己ベストで193.41点。ただし4回転サルコウを転倒しているため、ジャンプの質「-3」と転倒の「-1」がマイナスされている。単純計算でいくと197点台が出ることになり、ほぼ同格ながら、チャンをわずかに上回る可能性が高い。
もちろん、羽生はフリーでパーフェクトをまだ達成したことがない。4回転トウループはほぼ完璧だが、4回転サルコウの成功率は、今季は5戦のうち1回だ。
現地入りしてからの練習では、成功率は約5割。日増しに成功率は上がってきており、2月11日の練習後には「4回転のイメージは出来ている」と手ごたえを掴んだ様子だった。五輪本番で、初のパーフェクトを決めるだけの準備は整っていると言えるだろう。
慎重な言葉使いで互いに牽制しあったチャンと羽生。
実力から比較した点数はほぼ互角。となると重要なのは精神力だ。それを十分に分かっている2人は、ショート後の記者会見で慎重に言葉を選びながら、牽制しあった。
チャンはバンクーバー五輪という言葉を出すことで、経験をアピールした。
「メダルの色にはこだわらずに、自分の人生にとって特別な瞬間を演じることが大切。すでにバンクーバー五輪では、メダルを狙ったことで緊張し自分の演技ができなかった、ということを経験している。同じミスは繰り返さない。明日は自分のスタイルを大事に、オリンピックの演技というものを楽しみたい」と話す。
一方の羽生は、チャンの名前をあえて出し、自分の成長を語った。
「今季は、パトリックと3戦続けて戦ったことで、自分への集中の仕方を学ぶことができました。パトリックのお陰で、マインドコントロールも上手く出来るようになったんです。明日も自分に集中したいです」
会見は緊張感に終始包まれ、2人とも嬉しそうな笑顔は見せなかった。