オリンピックへの道BACK NUMBER
絶対女王、高梨沙羅がまさかの4位。
風とテレマーク、そして「真の実力」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/02/12 11:30
まさかの4位に終わり「すごく残念です」と無念さをにじませるも、高梨沙羅は決して風や環境のせいにはしなかった。
スキー・ジャンプ女子の高梨沙羅は、オリンピックで4位に終わった。
ワールドカップでは全13戦のうち実に10度優勝。優勝できなかった3大会でも2位2回、3位1回と、すべて表彰台に上がっている。
この驚異的な成績は、突出した力と際立った安定感をともに兼ね備えているからにほかならない。
今大会で金メダルを期待される選手として名前があげられるようになったのも、無理もない成績だ。
高梨自身、世界一になることへの意欲を示してきた。
だがオリンピックでは、金メダルはならなかった。そして今シーズンでは初めて、表彰台を逃すことになった。
誰もがその実力を認める高梨が、なぜオリンピックでは表彰台にすら上がることができなかったのか。
要因はきっと、いくつもあるだろう。踏み切りのタイミングは完璧だったのか、緊張はなかったのか……。
風向きの有利不利を解消する「ウインドファクター」。
ひとつ言えるのは、ジャンプという競技の難しさも、そこにあったということだ。
高梨は、表彰台に上がった3選手とは異なり、ただ一人2本ともに追い風でのジャンプとなった。
ジャンプが、気象条件が大きく影響する競技であることは昔から言われてきた。向かい風なら飛距離が出やすくなるし、追い風なら失速しやすくなる。ある意味、理不尽な競技でもある。
そしてその不公平さをあらためようと、ルールも改正されてきた。風の強さに応じて、向かい風なら減点、追い風なら加点するのである。「ウインドファクター」と言う。
このルールによって一見、向かい風、追い風による不公平は消えたように思える。
だが、必ずしもそうではない。