日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
「今はトップ下で突き抜けてみたい」
二足の草鞋を脱いだ中村憲剛の覚醒。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2014/02/07 10:40
昨季3位でACL出場権を獲得した川崎の中心にいたのは、紛れもなく中村憲剛だった。“本職”としてさらに凄みをますトップ下のプレーが、代表にもたらすものは大きいはずだ。
今も忘れられない、南アW杯の後悔。
ワールドカップの悔しい思い出は、今でも中村の頭から離れない。
4年前の南アフリカW杯、決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦。スコアレスのまま進んだ後半36分、初めて出番が訪れた。延長後半だった。抜け出した玉田圭司との呼吸が合わず、千載一隅のチャンスを逃がしてしまったシーンだ。
「タマ(玉田)がいい抜け方をしてくれたんです。俺がマイナスに構えていたところにタマがファーに出して……あの瞬間は忘れられないですね、ずっと。俺がもしあそこでファーに構えていたら合わせるだけだったし、決めていればパラグアイに勝てたはずなんです。
点を取りにいけていないトップ下としての俺の実力がそこまでだったということ。でも今の俺なら、迷わずファーにポジションを取れると思う。点を取ることに、こだわりを持ってやれていますから」
「嘉人と一緒に入れたらという思いでやっています」
そして今、やっとの思いで、彼は答えにぶつかった気がしている。
コンフェデ以降、メンバーから外れても代表の試合は必ずチェックしてきた。自分が入ったときのイメージを膨らませながら。そして、ゴールに意識を向かわせながら。
代表に帰らなければならない――。チームに貢献したいという思い、ワールドカップの舞台であの悔しさを晴らしたいという思いも強い。
「自分が必要かどうかは、ザッケローニ監督の判断だし、自分としては今さら慌てる必要もないと思ってます。でもずっと見ていてくれているとは思うので、いいパフォーマンスを見せていくしかない。代表の力にもなりたいし、嘉人と一緒に入れたらという思いを持って、やっています。だから全然あきらめてなんかないですよ」
確立した己のトップ下像。
33歳の中村憲剛に、猛チャージの気配が漂っている。