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昇格組・ベローナがまさかのEL圏内?
36歳のエースと熱血監督の快進撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/02/05 10:50
上位チームとも互角の戦いを見せるマンドルリーニ監督。
昇格組ベローナが、なかなかにしぶとい。
しぶといどころか、来季のヨーロッパリーグ出場権を争う勢いだ。22節を終えてインテルを抜き、5位に再浮上した。
「夢ではない。われわれは帰ってきた」
マンドルリーニ監督は、そう言って拳を固める。ELよりも何よりも、彼らには絶対に降格できない理由があるのだ。
11年ぶりにセリエAへ帰ってきたベローナは、開幕後すぐに手荒な“Aの洗礼”を受けた。
昨年9月、ローマとのアウェーゲームを終えオリンピコ・スタジアムから帰路についたベローナのチームバスは、首都のウルトラス(過激派サポーター)から襲撃された。高速道路へのルートに待ち伏せていた悪漢たちは、走行中のバス目がけて石や金属片を次々に投げ込んだ。
投げられた石の一つが、バスの左側窓ガラスを粉々に破壊した。あやうく運転手は直撃を免れたが、走行中の襲撃だっただけに大惨事になってもおかしくなかった。割れたガラスの破片を受けながら、熱血漢マンドルリーニは激昂した。
「我々はこんなことでは怯まんぞ。馬鹿どもの愚行に、ベローナのサッカーが負けることがあってはならん」
監督に目ぼしい実績はない。しかし熱い人間だった。
4年前にクルージュでルーマニア・リーグを優勝した以外、指導者としてのマンドルリーニに目ぼしい実績はない。'10年の秋に監督に就任、当時3部だったベローナをシーズン途中から立て直すと、サレルニターナとの昇格プレーオフに進んだ。すると、試合後にはロッカールームに侵入した対戦相手のウルトラスから殴る蹴るの暴行を受けたのだ。
怒りに震えるマンドルリーニは事件後の会見で報復の侮辱的暴言を吐き、罰金2万ユーロを払う羽目になったが、グラウンド外の不条理に毅然と立ち向かった監督の姿は選手たちを奮い立たせた。そうしてマンドルリーニは、ベローナを3部から1部へ導いた監督となった。