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昇格組・ベローナがまさかのEL圏内?
36歳のエースと熱血監督の快進撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/02/05 10:50
上位チームとも互角の戦いを見せるマンドルリーニ監督。
トーニを中心に、ホームでは前半戦10戦8勝と絶好調。
今季指揮官が攻撃の軸に据えたのは、元イタリア代表、36歳のベテランFWトーニだ。プロ生活20年目の今も、足捌きは決して器用とはいえないが、空中でDFたちをねじ伏せる高さは衰えることがない。
開幕戦でミランを沈めたドッピエッタ(=2得点)を皮切りに、泥臭くゴールを重ねる。「(イタリア代表の)プランデッリ監督から復帰のお呼びがかかれば、すぐにでも馳せ参じるよ」と茶目っ気も見せながら、2日のサッスオーロ戦で10ゴール目を達成した。リーグ戦での2桁得点はバイエルン時代の'08-'09年シーズン以来だ。試合後には「ユベントスが相手でもホームでなら勝負できる」と豪語した。
確かに今季、本拠地「ベンテゴーディ」でのベローナの勝負強さは際立っている。
開幕戦でミランを破る金星を挙げて以来、前半戦のホーム10試合で8つの白星を挙げた。
年間シートの販売数もぐんぐん伸びて、昨年9月の時点でついにクラブ史上3番目にあたる16129席を売り上げた。人口26万人の古都は、奇跡のスクデットを勝ち取った'84-'85年シーズンの熱狂を思い出しつつある。士気上がるクラブは、スタジアムと同じベンチでTV観戦できる直営レストランまでオープンさせるなど、周囲の熱は高まる一方だ。
12年前の苦い記憶が、ベローナの手綱をゆるませない。
そして、肝心のチームには浮ついたところがない。
それは12年前の苦い記憶のせいだ。
'01-'02年シーズン、セリエA前半戦をベローナは7位で終えていた。
将来を嘱望された若きFWムトゥやFWジラルディーノ、数年後にW杯優勝メンバーになるMFカモラネージなどを揃えたチームは開幕から好調を維持し、降格などあるはずがないと誰もがたかを括っていた。当時のフロントも冬の移籍市場でろくな補強を行わなかった。
しかし危機感の欠如は歯止めの利かない大失速を招き、リーグ最終盤の3連敗で命運尽きたベローナはセリエBに降格した。同じ町の郊外にあるキエーボが最終的に5位となりUEFAカップ出場権を獲得、“プロヴィンチャの奇跡”と称えられる一方、ベローナは憐憫と嘲笑の的になった。