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「肩をたたかれるまではやらないと」
ヤンキース黒田博樹の自負と覚悟。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/01/20 10:40
昨年末FAとなり、ヤンキースと1600万ドルで1年契約を結んだ黒田博樹投手。今シーズンも先発の柱として期待されている。
ヤンキースで最も信頼を寄せられる先発投手。
日本とはまったく違う環境、よりレベルの高い打者達と対峙しながら苦難を積み重ね、過去の自分を捨て去った上でメジャーの舞台で通用するものへ自らの投球を進化させていった。
そして今では、常勝軍団のヤンキースで最も信頼を寄せられる先発投手として認められる存在になったのだ。
この6年間で築き上げた実績に確固たる自負もあるだろうし、メジャー投手の中でも、垂涎の的である強豪チームのエースの座を簡単に放棄することは、やはり野球選手の本能として受け入れがたい部分があったのだろう。
「肩を叩かれるまではやらないといけない」
だがその一方で、黒田が話すように昨年は引退を考えたほど常に苦しみとも戦い続けていた。
特にシーズン後半は8月12日の勝利を最後に白星から遠ざかり、それ以降6連敗でシーズンを終えた。
8月途中まで防御率のタイトル争いをするほどの安定した投球を続けていたCC・サバシア投手が故障もあって本調子とは程遠い投球が続き、終盤はまさに黒田しか頼れる先発投手がいない状況だった。結局チームは、黒田の失速とともにプレーオフ争いからジリジリと後退せざるを得なかった。
「限界を感じることは多かれ少なかれある。同じ打たれるにしても、20代と30代後半では感じ方も変わってきます。だから自分の中で『もしかすると……』という受け取り方も芽生えてきました。
ただ、もう一度ヤンキースでやると決めたのは、自分で限界を決めてはいけないのかなということ。確かにこの年齢になると、引き際は自分で決めないといけない。でも日本とアメリカの引退の仕方は違うと思う。アメリカはよりシビアなので、誰もが最後は肩を叩かれて辞めないといけない。それならば、肩を叩かれるまではやらないといけないという使命感みたいなものもありました。
また僕自身が決めなければならないこともあるが、周りが決めてくれることもある。今回、こうしてヤンキースがオファーをしてくれたわけですから、チームが僕を信じてくれているということに対して、自分を疑わずに自分自身を信じてもう一度チャレンジしなければならないとも感じました」