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巨人の大型補強は、川上哲治流?
“超競争原理”で日本一奪回を期す。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/12/08 08:02
高卒3年目にして開幕投手を務めた宮國椋丞だったが、6勝7敗、防御率4.93と、首脳陣の期待には応えられなかった。
競争を最大に利用するため、移籍も使う“川上流”。
実はこの競争の原理こそ、かつてV9という前人未到の金字塔を打ち立て、10月28日に亡くなった川上哲治元監督が、チームを掌握して動かした最大の力でもあったのだ。
「ようやくレギュラーをとったと思ったら、すぐにそこにトレードや新人でライバルを当てられる。その度に“なぜ?”と、本当に川上さんを憎んだものだった」
こう振り返ったのはその後、指導者として西武で黄金時代を築いた森祇晶元監督だった。
「少しでも結果を残せなかったりコンディションが悪ければ、“じゃあ2軍に行け!”と容赦なくファームに落とされた。川上さんの下では、いつまでたっても必死だった」
こう振り返るのはV9時代のエースだった堀内恒夫前巨人監督(現参議院議員)だ。
このオフの巨人はフリーエージェント宣言した広島・大竹寛、西武・片岡治大に中日を退団した井端弘和を次々と獲得して、久々に大型補強をした。この後も先発投手に外野手と外国人の補強でも手を緩める気配はないようである。
「ポジションが保証されているのは、ウチでは慎之助(阿部)ぐらい。競争の中からしかポジションは取れない。その競争がチームを生き返らせるんだよ」
V9時代を彷彿させる“超競争原理”――それが日本一奪回への原イズムである。