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Kリーグを足がかりに欧州へ──。
新潮流をうみだす2人の元Jリーガー。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byGetty Images
posted2013/12/05 10:30
ACLの広州恒大戦、先制ゴール直後のエスクデロ。試合前には「日本の4チーム特に直接負けた浦和と柏の分まで絶対勝ちます! あと日本人として戦います!忘れないでくたざい!」とツイートしていた。
変化に飢えていた増田は、JよりKを選んだ。
増田は2012年シーズン終了後の鹿島との契約期間満了を控え、韓国行きを自ら選択した。2012年ACLチャンピオンチームからのオファー自体は、「もし望むなら来てみますか?」という印象だった。しかし自らのある渇望が決断を後押しした。
「変化を求めていたんです。鹿島から契約延長の話もいただいていたけど、その時のオファーの中から一番厳しそうな環境を選んだ。自分自身、大きく変わりたかったので」
蔚山としては決して“なんとなく”というオファーではなかった。2012年のクラブワールドカップ時に、後に増田を獲得する監督のキム・ホゴン(当時)がこんな話をしていた。
「本当はパスをつなぐサッカーがしたい。でも、それができる選手がいないからカウンターをやっているんだ」
196センチの韓国代表FW、キム・シヌクに当てるだけのサッカーから脱皮したい。パスを出せる選手が欲しい。そこに日本人選手のイメージがはまった。自身、延世大時代から慶応大との交流があったこともあり、日本人選手に対する明確なイメージもあった。
DFの裏を狙える日本人MFが求められていた。
2012年開幕前にもJ1の日本代表経験のある若手MFの獲得に動いたが実らず、スペインにいた家長昭博をレンタルで獲得した。
日本人MFが求められるほど、JリーグとKリーグではプレースタイルの違いがあるのか。今季から水原でプレーし、シーズン通算10ゴールを決めた鄭大世がこんな証言をしてくれた。
「意外なほどにDFラインの裏を取れるんですよ。あらっ? と。でもそこにボールがなかなか出てこない傾向がある」
そこを狙うMFがあまりいないから、DFの裏を取れる。そういう話でもある。
蔚山を足がかりにヨーロッパを目指す。
精密なパスを出す役割を求められた増田だったが、シーズン中盤にある転換を迫られた。監督が理想とするショートパスのスタイルでは結果が出ず、従来の長身FWに合わせるスタイルに逆戻りしたのだ。しかしこれも「横や後ろのパスに逃げず、前にボールを動かす考えを自分につける」という意識で乗り切った。前出の現地サッカー専門誌「ベストイレブン」の記者は「中盤の底でパスを散らしつつ、フィジカルでも戦える選手」と評する。そのほか、試合前の食事ですら濃い味付けの韓国料理だという点に戸惑ったりもしたが、すべて変化の決意の前には「小さいこと」に思えた。
変化の先に大きな目標があるからだ。
「ヨーロッパに行きたいんです。行けるのならすぐにでも、という気持ちはあるんですが来年も蔚山に残ることにしました。ACL出場権獲得に自分も貢献できたと思うので、これに出場しようと。韓国でプレーして、個の力で局面を解決する力がついたと思います。組織がベースの日本に対し、ここは個の力で攻める、守りきるといった状況が多々ありますからね」