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<トロントに愛された野球小僧> 川崎宗則 「笑い飛ばして、今日もまた」 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2013/11/20 06:00

<トロントに愛された野球小僧> 川崎宗則 「笑い飛ばして、今日もまた」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

「自分では何かができたという感じはないんです」

「数字が上がったといっても1割9分が2割2分だから……結局、ミスばかりなんです。やられてばっかりだし、できないことが多いのは今年も一緒。むしろ今年の方が打席が多い分、悔しさも大きかったんじゃないかな。確かにホームランは打てたし、去年よりタイミングに関しては分かったこともあります。でも、できていることが少なすぎて、自分では何かができたという感じはないんです」

 打率は低くてもここという場面ではバントを決め、犠牲フライを打ち上げた。バントのふりをしながらピッチャーを牽制してフォアボールを選ぶなど、出塁率は1年目の.257から.326へと、大幅に上げている。守りでも、左足首を痛めて戦列を離れたホセ・レイエスの代わりにショートとして51試合、レイエス復帰後はセカンドとして16試合に先発、安定した守備力も見せた。日本人のセカンド、ショートはしばしばゲッツー潰しのクロスプレーでケガをさせられてきた。松井稼頭央、岩村明憲、西岡剛……そんな中、川崎はメジャーとマイナーを合わせて150試合に出場して、ケガをせずに乗り切った。そこには、川崎なりの工夫があった。

ゲッツー潰しを狙うランナーを“ビビらせる”投げ方。

「ゲッツー潰しで致命的なケガをしないよう、いろんな投げ方を練習しました。上から、下から、横から、真下から……たとえば下から投げることで、相手のスライディングを少しだけ遅らせることができるんです。上から投げたら、実はスライディングしやすい。それをちょっと角度を変えて下から投げたら、ランナーがビビって、スライディングも緩む。その分、スピードが落ちるから、投げた後にバーンと来られても、弱いでしょう。ランナーに安心感を与えないために、いろんな投げ方を覚えなくちゃいけないんです」

 マイナーに落とされようが、スタメンを外されようが、野球がうまくなりたいと、川崎は他の選手のプレーを目を皿のようにして見つめている。そして、あれこれと妄想を膨らませて、今度はああしてみよう、こうしてみようとイメージする。厳しい環境の中でも、いつも前に出ることだけを考えていた。

【次ページ】 「オレだって、素から元気なわけじゃない」

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川崎宗則
トロント・ブルージェイズ

MLBの前後のコラム

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