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<天才ドリブラーのルーツ> マリオ・ゲッツェ 「ドイツ完成形へのラスト・ピース」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byItaru Chiba
posted2013/11/06 06:01
届きそうで届かない、世界一の玉座。およそ10年間、
ドイツは大一番で歯がゆい思いをし続けてきた。
しかし今、21歳のドリブラーが大国を変えようとしている。
「100年に1度」と評される若き才能の原点を追った。
ドイツは大一番で歯がゆい思いをし続けてきた。
しかし今、21歳のドリブラーが大国を変えようとしている。
「100年に1度」と評される若き才能の原点を追った。
マリオ・ゲッツェは、足が速いわけでも、フィジカルが強いわけでもない。身長は176cm。ドイツ代表の中ではラームに次ぐ背の低さだ。ぽっちゃりしているようにすら見える。
だが、この21歳をナメてはいけない。実際に目の前にすると、DFが動けなくなるほどの技術とアイデアを持っているのだ。
10月15日W杯予選、スウェーデン対ドイツ――。前半はスウェーデンが1点をリードして優位に立っていた。しかし後半、流れが一気に変わる。ゲッツェが2列目に投入されたからだ。
ゲッツェは正確なトラップでパスの中継点になり、自らもゴールを狙って後半8分に同点弾。その後、体のひねりだけで相手を右に振り、左にパスを通すという神業的フェイントからアシストした。
途中から1トップに入って、“偽9番”として相手を翻弄。ドイツに5対3の逆転勝利をもたらした。
試合後、レーブ監督はジョーカーを称えた。
「マリオは相手の隙間にうまく入り込み、ボールを受けた瞬間に仕掛けていた。信じられないくらいモチベーションが高く、素晴らしい仕事をしてくれた」
2006年W杯以降、ドイツはW杯とユーロにおいて常にベスト4以上の結果を残してきた。だが、優勝だけに手が届いていない。惜しいところまで行きながら、接戦になると脆さを露呈し、スペインに2度、イタリアに2度競り負けてしまった。まだ何かが欠けているのだ。