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葛飾区が産んだ「昭和の2大スター」
両さんと寅さんに、教わったこと。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/12/18 08:00
素朴な味がうれしい、柴又名物の草団子。
参道にある数々のお土産物屋さん、そのいちいちに飾られた寅さんの映画ポスター。そこには旧き佳き日本が映り、その面影を失わんとするように、あたかも真似ようとするように、街の人たちは今もふるまい、そうして、この柴又という街のプレゼンスはできている。
参道の突き当たりには、御前さま(ああ、昭和のおじいさん、笠智衆)がいた帝釈天があり、蛾次郎が掃いていた庭がある。
そして、車寅次郎の実家のモデルとなったのが、参道に入ってすぐの団子屋さん「高木屋老舗」である。
当然のように高木屋さんで草団子を買った。これまた素朴で普通に美味しい草団子だ。
「中に寅さんゆかりの色んなものが展示してありますから、見ていって下さいね」
高木屋さんの明るい若おかみが言う。店内は、草団子だけじゃなく、くず餅、おでん、あんみつなどが食べられる。その伝統的メニューがイカしてる。
壁に映画撮影のスナップ写真の数々や「寅さんの予約席」などが、展示してある。
葛飾区は、なぜ足立区より得しているのか。
さあ、帰りは京成線をつたって、上野あたりまで出てみよう。そろそろ寒くなってきた。陽が落ちた後の風で、背中の汗がちょっと冷えてくる。
お、目の前にスカイツリーだ。ライトアップしているわけじゃないんだろうけど、工事の光が煌々と点いていて、それが夜空に映えている。
それにしても、考えてみれば、葛飾区は得してる。
たとえば隣の足立区と較べてみるとよく分かる。区の成り立ちはあまり変わらないはずなのに、イメージにかなり差がある。
葛飾区の場合は、下町人情で、江戸情緒で、なにか牧歌的な「いいイメージ」。ところが、これとは逆に、足立というと「犯罪発生率が23区の中で……」とか「給食費滞納率が……」とか、どこかバイオレンスなイメージが強いわけだ。私の知り合いに、足立の区立中学教師がいて、かつて私にこう言った。
「足立はほんと損してるよ。どこにだって不良はいるし,葛飾のヤンキー密度なんて、俺が見たところ、たぶん足立より高いぜ。なのに、足立ばかりが悪く言われる。足立はキャラがどこかぼんやりとしてるからかね。あらゆる指標において、隣の葛飾と違いがあるわけじゃないのに、うちらは悪いところばかり目立っちゃう」