野球クロスロードBACK NUMBER
楽天を常に前進させ優勝に導いた、
AJ&マギーの計り知れない貢献。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/27 12:00
ジョーンズと共にスタンドのファンに挨拶をして回っていた田中。メジャー生活17年のうち14回の地区優勝を経験しているジョーンズは、まさに“優勝請負人”の面目躍如。
できすぎた幕切れだった。
4対3と1点リードで迎えた9回裏、エースの田中将大が守護神としてマウンドへ向かう。直前にロッテが日本ハムに敗れたため、マジックは1に減った。この回西武を無得点に封じれば、楽天のリーグ制覇が決まる。
星野仙一監督いわく、「そうは問屋が卸さない」状況もまた、シナリオを劇的にする。
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先頭の鬼崎裕司に内野安打を許し、ヘルマンを四球で歩かせた後、片岡治大に送りバントを決められ1死二、三塁。一打サヨナラのピンチ。ここから田中の胆力が増していく。
どこまでも役者。そんな投球だった。
「栗山さんの打席で1回、首を振ったとき、『これは全部真っ直ぐでいきたいんだな』と感じたので、一番悔いのない真っ直ぐで全球投げよう、決着がつくまで真っ直ぐで行こうと思っていました」
捕手の嶋基宏は、そう覚悟を決めたという。今季、ここ一番での田中のギアの上げ方は、彼が一番よく理解していた。異論はない。
最終回のピンチに、オール150キロ台のストレート。
初球からオール150キロ台のストレート。3番・栗山巧を3球で見逃し三振に打ち取ると、続く4番の浅村栄斗にも150キロ越えのストレートで勝負を挑む。カウント2-2からの5球目は、この日最速の153キロを計測した。
浅村のバットが空を切る。球団創設9年目。楽天はついに、初の栄冠を手にした。
右拳を力強く握りしめる。歓喜の輪では駒大苫小牧時代からおなじみの「ナンバーワン」ポーズを掲げた。
「シーズンが始まる前は、誰も(楽天が)優勝するなんて思っていなかったと思う。いい意味で期待を裏切れて嬉しいです」
感情はマウンド上で爆発させ、グラウンド以外では物事を俯瞰して話す。いつもの田中らしく、あくまでも冷静に喜びを表現した。
7月4日、6月以降では球団史上初の首位に立ち、6日には単独首位となった。それから一度もトップの座から陥落することなく、9月26日、パ・リーグを制した。
原動力は、言うまでもなく田中だった。
開幕連勝とシーズン連勝の日本記録を樹立し、今も数字を22にまで伸ばしている。圧倒的なパフォーマンス。それは、防御率1.22、22勝0敗1S(数字は全て9月26日現在)を見れば誰もが納得できる。