後半戦は4度目のレンタル移籍の可能性も!?

　チェンバレンは、10月上旬の戦線復帰が見込まれ、ポドルスキの欠場も、最長で年内一杯だろう。加えてアーセナルは、フェネルバフチェ戦の翌週にメスト・エジルを獲得した。クラブ史上最高の移籍金を費やした新トップ下の加入は、技巧派のサンティ・カソルラとトマシュ・ロシツキーが、2列目アウトサイドに回る機会が増えることを意味している。タイプは異なるが、ポジション争いにおける宮市の順位は、格上の競争相手2名分だけ下がる恰好だ。

　となれば、後半戦はレンタル移籍というシナリオが現実味を帯びる。開幕直前、宮市レンタル説を否定しつつも、「今の所は」と強調したベンゲルの発言は、最終的な補強具合によっては、入団決定から4シーズン連続のレンタルがあることを示唆するものだった。

　12月で21歳の宮市にすれば、最も必要なのはトップリーグにおける一軍での実戦経験だ。相応の引き取り手が見つかれば、最後の修行という覚悟を前提として、レンタル移籍もまた悪い話ではない。だが、幸運にも訪れたアーセナルでのアピール機会を活用しない手はない。

　宮市がアウトサイドの戦力として認識されれば、チームには歓迎すべき間接的効果もある。ベンゲルにとっては、セントラルMFにチェンバレンを据えるという将来像を実戦で確認する機会が増える。

　以前から前線中央での起用を希望しているウォルコットとポドルスキにしても、宮市がアウトサイドで頭角を現せば、彼らがサイドの任務から解放される試合が多少は増える可能性があるのだから。

「ここ、ロンドンでやりたいです！」

　当人の口から、「ここ、ロンドンでやりたいです！」と、改めてアーセナルの一軍定着への意気込みを聞いたのは、右足首の手術から1カ月弱を経た春のこと。北ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた、FAカップ準決勝ミルウォール対ウィガンのハーフタイム中のことだった。

　記者席後方で観戦していた宮市に声をかけると、「来週にはこれも取れるんで」と、右足のプロテクターを指差して微笑んだ後、すかさず「来シーズンは」と続けて、言ってくれた。その明るく前向きな表情は、ウィガンへのレンタルが怪我一色に終わって気落ちしているのではないかという、こちらの心配を一掃するほど頼もしいものだった。アーセナルの「RYO」には、その決意を、練習グラウンドで、そして試合のピッチで、気後れすることなく表現すべき時が訪れている。