MLB東奔西走BACK NUMBER
果たして真実はどこにあるのか?
岩隈のポスティング交渉の裏側。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/11/26 10:30
WBCでの投球で一躍メジャーにその名を知らしめることになった岩隈。星野・楽天からのラブコールもあるだけに、難しい選択を迫られている
果たして真実は何処にあるのだろうか?
11月21日(日本時間22日)、日米両メディアは、ポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指す岩隈久志投手と、30日間の独占交渉権を得たアスレチックスとの交渉が決裂したと報じた。その後も様々な続報、関連報道が繰り返されるほどの大騒ぎになっているが、結局のところ交渉を行っている両サイドから「交渉打ち切り」の正式表明はなされていない。
今回の報道に関する日本のメディア報道の時系列まで正確に把握はしていないが、米国での発信源は分かっている。アスレチックスの地元紙であるサンフランシスコ・クロニクル紙(11月21日)である。そしてこの記事を後追いするように、オークランド・トリビューン紙、アスレチックスの公式サイトが報じるという流れだった。
報道は「残留決定」の基調も両チームはいまだ沈黙。
発端となったチーム番記者のスーザン・スラッシャー記者の記事によれば、関係者筋の情報としてアスレチックスの提示額と岩隈サイドの希望額に埋められない差があり交渉が決裂したため、楽天は11月23日に行われるファン感謝祭で岩隈残留を正式発表するだろうというものだった。
だが実際は楽天から何の発表もなく、逆に岩隈の代理人である団野村氏はメディアの前で状況説明を行い、交渉再開の可能性を示唆している(一部報道では交渉期間が終わるまで楽天から正式発表できないという見方をしているが)。
一方のアスレチックスも、独占交渉権を得てから一貫して沈黙を続けていることから考えると、まだ交渉が打ち切られていないことだけは間違いなさそうだ。
そもそもアスレチックスはどこまで本気なのか?
その後もスラッシャー記者は、代理人や日本の情報筋の取材を敢行するなどして3日連続で関連記事を掲載し続け、その中で非常に興味深いいくつかの論証をしているのだ。
まず一部報道にあるような、アスレチックスが岩隈をライバル・チームに行かせないようにポスティング制度を悪用したのではという疑念を完全に否定している。
彼女の主張では、他チームの入札額を知っているわけではないし、岩隈獲得をある程度楽観視していたから独占交渉権を得た2日後に先発投手の1人ビン・マザーロをトレードに出したとし、「この2週間、私はチーム関係者と話を続けてきたが、彼らの目的が岩隈と契約する以外のことだったとしたら、私は驚愕するだろう」とまで語調を強めているのだ。